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長期金利の上昇で住宅ローンはどこまで重くなるのか

家賃高騰の先にあるのは『買えば安心』という幻想か

最近は、インフレによる物価高の影響が家計のさまざまな場面に及んでおり、家賃の値上げを通告されるケースもメディアで取り上げられるようになりました。毎月の固定費がじわじわと重くなる中で、「このまま賃貸に住み続けるより、いっそ購入した方がよいのではないか」と考える人も増えているのではないでしょうか。

実際、住まいの購入を検討し始めると、首都圏では新築・中古を問わず、マンション価格が1億円を超えるケースも珍しくありません。物件価格そのものの高さに驚かされる一方で、購入を考えるうえでもう一つ見逃せないのが、住宅ローンの金利動向です。

家を買うとき、多くの人は物件価格に目が向きがちです。しかし、実際に長期間にわたって家計へ影響を与えるのは、価格だけではありません。住宅ローンの金利は、毎月の返済額や最終的な総支払額を大きく左右する重要な要素です。場合によっては、家の価格変動以上に、家計への負担感を左右することもあります。

そこで今回は、最近の長期金利の動きと、それが住宅ローン、とくに固定金利型ローンにどのような影響を与えているのかを見ていきたいと思います。

フラット35の金利推移と5,000万円借入シミュレーションで見る家計への影響

住宅ローンを取り巻く環境が、この数年で大きく変わってきました。以前は「日本は低金利だから、住宅ローンの負担は急には重くなりにくい」と考えられていましたが、最近はそうした前提が揺らぎつつあります。背景にあるのが、長期金利の上昇です。ニュースで長期金利や10年国債利回りという言葉を見かけても、すぐに自分の家計と結び付けて考える人は多くないかもしれません。しかし実際には、長期金利の上昇は固定型住宅ローンの金利に影響し、住宅購入時の負担をじわじわと押し上げていきます。

とくに固定金利型の代表的な住宅ローンであるフラット35は、長期金利の動向を受けやすい商品です。住宅購入を検討している人にとってはもちろん、すでに固定金利で借りている人や、これから借り換えを考える人にとっても、長期金利の上昇は無視できないテーマになっています。今回は、財務省資料による長期金利の推移と、住宅金融支援機構のフラット35の金利推移、さらに5,000万円を35年で借りた場合のシミュレーションをもとに、住宅ローン負担がどのように変わってきたのかを見ていきます。

財務省資料で見る長期金利の上昇

まずは、財務省資料による長期金利の動向を確認してみましょう。ここでは、各年4月時点の10年国債利回りを並べています。

  • 2020年4月:0.03%
  • 2021年4月:0.08%
  • 2022年4月:0.20%
  • 2023年4月:0.46%
  • 2024年4月:0.76%
  • 2025年4月:1.41%
  • 2026年4月:2.35%

出典:財務省「国債金利情報」

この数字を見ると、2020年から2022年にかけては超低金利の範囲にとどまっていたものの、2023年以降は上昇ペースが明らかに強まっていることが分かります。特に2024年から2026年にかけては、上昇の角度が急になっており、長期金利が「ほとんどゼロに近い世界」から、「明確な金利のある世界」へ移りつつあることがうかがえます。

長期金利は、国債市場の需給、インフレ期待、金融政策の方向性など、さまざまな要因を反映して動きます。そしてこの長期金利は、単なる金融市場の話で終わるものではありません。住宅ローン、とくに固定型の金利にとっては重要な基準の一つになるため、家計にとっても非常に身近な意味を持つのです。

長期金利の動向を受けてフラット35も上昇

長期金利の動きは、実際の住宅ローン商品にも反映されています。フラット35の金利推移を見ると、その変化はより生活に近い形で理解できます。

長期金利の動向を受けて、フラット35へ反映された金利は次のとおりです。

  • 2020年4月:1.30%
  • 2021年4月:1.37%
  • 2022年4月:1.40%
  • 2023年4月:1.76%
  • 2024年4月:1.82%
  • 2025年4月:1.94%
  • 2026年4月:2.49%

出典:住宅金融支援機構【フラット35】公式サイト

住宅金融支援機構のフラット35の金利推移を見ると、借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付きの4月金利は、2020年4月の1.30%から2026年4月には2.49%まで上昇しています。2022年までは1%台前半だった水準が、2023年以降は上昇基調を強め、2026年には2%台後半に迫る水準となりました。住宅ローンの固定金利負担が、数年で大きく変化していることが分かります。

ここで重要なのは、長期金利とフラット35の金利は同じ数字ではないものの、方向性として強く連動しやすいという点です。長期金利が上がれば、金融機関や住宅ローン提供側の資金コストや価格設定にも影響し、それが固定型住宅ローンの金利に反映されやすくなります。つまり、長期金利の上昇は、遠い市場の話ではなく、住宅取得コストの上昇として家計に跳ね返ってくるのです。

5,000万円借りた場合、返済額はどこまで変わるのか

数字の動きだけでは、実際の負担増を実感しにくいかもしれません。そこで、5,000万円をフラット35で借りた場合の返済額をシミュレーションしてみます。

前提は、借入額5,000万円、35年返済、元利均等返済、ボーナス払いなしです。金利は、各年4月のフラット35金利をそのまま固定金利として当てはめています。

シミュレーション結果は以下のとおりです。

  • 2020年4月:1.30%
    毎月返済額:約14万8,241円
    35年総支払額:約6,226万1,259円
  • 2021年4月:1.37%
    毎月返済額:約14万9,928円
    35年総支払額:約6,296万9,846円
  • 2022年4月:1.40%
    毎月返済額:約15万654円
    35年総支払額:約6,327万5,021円
  • 2023年4月:1.76%
    毎月返済額:約15万9,540円
    35年総支払額:約6,700万6,678円
  • 2024年4月:1.82%
    毎月返済額:約16万1,050円
    35年総支払額:約6,764万1,031円
  • 2025年4月:1.94%
    毎月返済額:約16万4,096円
    35年総支払額:約6,892万293円
  • 2026年4月:2.49%
    毎月返済額:約17万8,480円
    35年総支払額:約7,496万1,485円

この比較は非常に分かりやすいです。2020年4月の1.30%と2026年4月の2.49%を比べると、毎月返済額は約3万239円増加し、35年総支払額は約1,270万226円増加します。月々3万円の差は、一見すると「何とかなる」と感じる人もいるかもしれません。しかし、住宅ローンは数か月ではなく35年という長期にわたって続く支払いです。その差は、教育費、老後資金、生活費、資産形成の余力にまで影響を与える大きなものになります。

金利上昇は「買える家」を変える

住宅ローンの金利上昇がもたらすのは、単なる返済額の増加だけではありません。購入できる住宅の価格帯や条件そのものを変えてしまう力があります。

たとえば、月々15万円前後で返済したいと考えていた人にとって、2020年ごろの金利水準であれば5,000万円近い借入も視野に入れやすかったかもしれません。しかし2026年の水準になると、同じ5,000万円の借入で毎月返済額は約17.8万円に達します。月々の予算を抑えたいなら、借入額を減らすか、頭金を増やすか、物件価格を下げる必要が出てきます。

つまり、金利上昇は「返済が少し苦しくなる」だけではなく、「希望していた家が買えなくなる」「立地や広さの条件を見直さざるを得なくなる」という形でも表れます。住宅価格が高止まりしやすい状況の中で、金利まで上がると、家計への圧迫は二重になります。住宅ローンの問題は、金利だけ、物件価格だけで語れるものではなく、両方が重なることで家計に効いてくるのです。

固定金利だからこそ、金利差の重みが大きい

フラット35は固定金利型であるため、契約時に返済額がほぼ確定し、将来の金利上昇リスクを避けやすい安心感があります。その一方で、借入時の金利水準が高くなると、その影響を長期間にわたって受け続けることになります。

変動金利であれば、当初の金利が低いことで月々の返済額を抑えられる場面がありますが、将来的な見直しリスクを抱えます。これに対して固定金利は、今の金利で安心を確保する仕組みです。だからこそ、借入時点の金利差がそのまま長期の支払差となって現れやすいのです。

今回のシミュレーションでも、その特徴ははっきり表れています。2020年と2026年では、金利差は1.19ポイントです。しかし、その差が35年続くことで、総支払額には1,270万円以上の差が生まれています。これは「少し高い」では済まないレベルです。固定金利を選ぶということは、安心を買うことでもありますが、その安心の価格が長期金利の上昇によって高くなっているともいえるでしょう。

これからの住宅ローン選びで大切なこと

これから住宅ローンを組む人にとって大切なのは、「いくら借りられるか」ではなく、「いくらなら返し続けられるか」を基準にすることです。金融機関の審査に通る金額と、家計が安心して負担できる金額は同じではありません。特に金利上昇局面では、今の返済額が払えるかどうかだけでなく、将来の生活費や教育費、老後資金とのバランスまで考える必要があります。

借入額を少し抑える、頭金を増やす、返済期間を見直す、生活費に余白を持たせる。こうした基本的な工夫が、金利上昇時代にはこれまで以上に重要になります。住宅購入は人生の大きな決断ですが、買うこと自体がゴールではありません。その後も安定して暮らし続けられることこそ、本当の意味での成功だといえます。

今回の数値を見ると、長期金利の上昇がフラット35の金利を押し上げ、その結果として毎月返済額や総支払額が大きく膨らんでいることがはっきり分かります。2020年には約14.8万円だった毎月返済額が、2026年には約17.8万円まで増え、総支払額も約6,226万円から約7,496万円へと上昇しました。金利の変化は、数値として見るとわずかに感じられるかもしれませんが、住宅ローンという長期契約の中では非常に大きな意味を持ちます。

長期金利の上昇は、金融市場の話にとどまりません。住宅購入のハードルを上げ、家計の余裕を奪い、将来設計にまで影響する、生活に直結した問題です。これから家を買う人も、住宅ローンを見直したい人も、目先の金利の低さだけに目を向けるのではなく、長く返し続けられるかどうかという視点から判断することが重要です。金利が上がる時代だからこそ、住宅ローン選びにはこれまで以上に慎重さと現実感が求められているのです。

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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品や銘柄への投資を勧誘するものではありません。掲載内容は執筆時点の情報をもとに作成していますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。投資に関する最終判断は、必ずご自身の責任でお願いいたします。

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