住宅ローンの固定金利が上がる局面では、多くの人が「金利上昇は家計にとってマイナス」という印象を持ちやすくなります。たしかに、これから住宅ローンを組む人にとっては、固定金利の上昇は返済負担の重さにつながりやすく、慎重な判断が必要です。
しかし、金利が上がることは、必ずしも悪いことばかりではありません。借りる側にとっては逆風でも、預ける側、運用する側にとっては追い風になる場面があります。その代表例のひとつが、個人向け国債です。
とくに、値動きの大きい投資商品に不安がある人や、「増やしたいけれど、元本割れは避けたい」と考える人にとって、個人向け国債は見直す価値のある商品です。個人向け国債は、国が発行する債券であり、満期まで保有すれば額面金額100円につき100円で償還されます。さらに、発行から1年経過後は中途換金も可能で、仕組み上も“元本を大きく毀損しにくい”設計になっています。
今回は、長期金利上昇局面でなぜ個人向け国債が注目されるのか、2026年4月の具体的な金利、商品ごとの違い、購入方法までをわかりやすく整理します。住宅ローンの固定金利上昇を気にしている人ほど、資産運用の側では「金利上昇を味方につける」という発想も持っておきたいところです。
長期金利上昇で、個人向け国債の魅力が増している理由
個人向け国債が注目される理由は、シンプルに言えば「元本保証でありながら、以前より利回り環境が改善している」からです。
低金利が長く続いた時期には、元本保証型の商品は「安心だけれど増えない」という印象を持たれがちでした。ところが、足元では長期金利の上昇を背景に、個人向け国債の適用利率も上がってきています。実際、2026年4月募集分では、変動10年が年1.55%、固定5年が年1.79%、固定3年が年1.51%となっており、以前の超低金利時代と比べると、元本保証型商品としての見え方はかなり変わってきました。
もちろん、株式投資や投資信託のように大きな値上がり益を狙う商品ではありません。しかし、個人向け国債に期待すべきなのは、短期間で大きく増やすことではなく、「減らさずに、着実に利子を受け取ること」です。資産運用では、攻めるお金と守るお金を分けて考えることが重要ですが、その“守るお金”の置き場所として、いまの個人向け国債は以前より現実味のある選択肢になっています。
個人向け国債はなぜ「元本保証型」として評価されるのか
個人向け国債の最大の特徴は、国が元本と利子の支払いに責任を持つという点です。満期まで持てば、償還金額は額面100円につき100円で、購入価格も額面100円につき100円です。つまり、基本的には満期保有で額面どおり戻ってくる仕組みです。
さらに、個人向け国債には最低金利の下限が設定されており、変動10年、固定5年、固定3年のいずれも下限は0.05%です。金利が大きく下がったとしても、ゼロ金利にはなりにくい設計になっています。
また、「途中でお金が必要になったらどうするのか」という不安もあるかもしれません。個人向け国債は、発行から1年経過すれば、1万円単位でいつでも中途換金が可能です。中途換金時には、直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685の調整額が差し引かれますが、それでも株式や投資信託のように日々の市場価格変動で大きく元本が上下する商品とは性格が異なります。
このように、個人向け国債は「増え方は控えめでも、元本を守りながら運用したい」というニーズに合いやすい商品です。特に、生活防衛資金のすべてを預金に置くのではなく、一部を少しでも有利な条件で運用したい人に向いています。
2026年4月の個人向け国債の金利を期間別に見る
2026年4月募集分の個人向け国債は、以下の3種類です。

まず、変動10年は初回の適用利率が年1.55%(税引後1.2351175%)です。変動10年の特徴は、半年ごとに適用利率が見直されることです。今後さらに金利上昇が続く局面では、受取利率も見直される可能性があります。逆に将来の金利低下局面では利率も下がる可能性がありますが、0.05%の下限があります。
次に、固定5年は年1.79%(税引後1.4263615%)です。こちらは購入時に決まった利率が満期まで変わりません。今の金利水準をそのまま5年間固定したい人に向いています。足元の条件を見る限り、2026年4月募集分では3商品の中で最も高い利率です。
そして、固定3年は年1.51%(税引後1.2032435%)です。5年は長いと感じるものの、普通預金や定期預金より高い金利水準を狙いたい人には、比較的取り組みやすい選択肢といえます。
募集期間は2026年4月6日から4月30日まで、発行日は2026年5月15日です。利払いは年2回で、原則として毎年5月15日と11月15日に行われます。償還期限は、変動10年が2036年5月15日、固定5年が2031年5月15日、固定3年が2029年5月15日です。
どの商品を選ぶべきか
結論からいえば、何を重視するかで選び方は変わります。
今後も金利が上がるかもしれないと考えるなら、変動10年は有力です。半年ごとに利率見直しがあるため、固定で早く決めてしまうよりも、金利上昇の恩恵を受けやすい面があります。反対に、「今の利率を確定させておきたい」「数年単位で予定が決まっている」という人は、固定5年や固定3年が合いやすいでしょう。
たとえば、教育費や住宅関連の頭金など、3年後から5年後に使う予定がある資金なら、固定3年や固定5年は使い道との相性がよい商品です。一方で、老後資金や当面使う予定のない守りの資産であれば、変動10年をコアに考える方法もあります。
重要なのは、個人向け国債を「一発で大きく増やす商品」として見るのではなく、預金とリスク資産の中間にある、守りの運用先として位置づけることです。株や投資信託だけに偏ると、相場下落時に心理的な負担が大きくなります。そこで一部を元本保証型の商品に振り分けることで、全体のバランスを整えやすくなります。
購入方法は難しくない
個人向け国債は、証券会社、銀行、郵便局などの取扱金融機関で購入できます。初めて買う場合は、購入する金融機関で国債専用の口座を開設し、募集期間中に申し込む流れです。インターネットで購入できる金融機関もあり、ネット証券や一部銀行を利用すれば、店舗へ行かずに手続きできる場合もあります。
購入単位は1万円から1万円単位です。まとまった資金が必要な印象を持つ人もいますが、個人向け国債は比較的少額から始められます。最初から大きな金額を入れる必要はなく、「まずは10万円」「まずは50万円」という形で始めることも可能です。
一般的には、口座開設時に本人確認書類やマイナンバー確認書類などが必要になります。具体的な必要書類や手続きの流れは金融機関ごとに異なるため、申し込み前に確認しておくとスムーズです。
住宅ローン固定金利上昇を不安に感じる人ほど、「守る運用」を考えたい
住宅ローンの固定金利上昇は、たしかに家計にとっては重い話です。ただ、同じ金利上昇局面でも、資産運用の側ではメリットを受けられる商品があります。その代表が、個人向け国債です。
金利上昇局面で大切なのは、「借りるコストが上がる」という面だけでなく、「安全資産の利回りも上がる」という面に目を向けることです。住宅ローンの将来負担に備えたい人や、相場の乱高下に振り回されたくない人にとって、個人向け国債は非常に相性のよい選択肢です。
とくに、元本保証を重視したい人にとっては、預金だけに頼るよりも一歩踏み込んだ選択になり得ます。もちろん、生活防衛資金をすべて国債にする必要はありませんが、使う時期がある程度見えている資金や、守りながら置いておきたいお金の一部を振り向けるには検討しやすい商品です。
長期金利の上昇は、住宅ローン利用者にとっては逆風です。しかし、資産運用の視点では、その逆風をそのまま受けるだけではなく、個人向け国債という形で一部を追い風に変えることもできます。値上がり益を狙う派手さはなくても、元本保証という安心感を持ちながら、以前より高い利率を得られる環境が戻ってきています。守りを重視したい人は、今こそ個人向け国債を見直してみる価値があるのではないでしょうか。
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品や銘柄への投資を勧誘するものではありません。掲載内容は執筆時点の情報をもとに作成していますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。投資に関する最終判断は、必ずご自身の責任でお願いいたします。