最近、長期金利が上昇しており、住宅ローンの固定金利への影響を気にする方も増えています。固定金利は返済額が一定で安心感がある一方、借入時の金利が高くなるほど、毎月の返済額や総返済額の負担は大きくなります。特に借入額が大きい場合や返済期間が長い場合は、わずかな金利差でも家計への影響は小さくありません。住宅ローンを検討する際は、「いくら借りられるか」ではなく、「無理なく返し続けられるか」という視点がより重要になります。この記事では、固定金利が上がると返済額がどれくらい増えるのかを、具体的な試算を交えながらわかりやすく解説します。
固定金利の住宅ローンとは
固定金利の住宅ローンとは、借入時に一定期間または全期間の金利条件が決まっているローンです。国土交通省の定義では、全期間固定金利型は「融資の契約時に返済期間の金利が確定している」もので、総返済額が見通しやすい特徴があります。一方で、固定金利期間選択型は、当初の一定期間だけ金利が固定され、その後に見直しが入るタイプです。この記事で主に想定するのは、返済開始から完済まで金利が変わらない全期間固定金利型です。
固定金利の魅力は、将来の金利上昇に左右されにくく、家計管理がしやすいことです。毎月の返済額が原則として変わらないため、教育費や老後資金など、長期の資金計画を立てやすくなります。ただし、金利が低い時期に借りられれば有利でも、金利が上がった局面では、その高い水準で返済額が固定される点には注意が必要です。安定を買う代わりに、返済総額が重くなる可能性があるのが固定金利の特徴です。
固定金利が上がると返済額はどう増えるのか
住宅ローンの返済額は、借入額、金利、返済期間で決まります。固定金利が上がると、毎月返済額は上昇し、その状態が完済まで続きます。たとえば金利差が0.5%であっても、35年返済のような長期ローンでは、総返済額で見ると数百万円単位の差になることもあります。数字だけ見ると0.5%は小さく見えますが、住宅ローンでは無視できない差です。
ここでは、元利均等返済・ボーナス返済なし・返済期間35年という条件で、筆者が独自に試算した例を見てみます。あくまで参考試算ですが、固定金利上昇の影響をつかむには十分です。
借入額3,000万円の場合
3,000万円を35年返済で借りた場合の試算は次のとおりです。
- 金利1.5%:毎月約91,855円、総返済額約3,857万円
- 金利2.0%:毎月約99,379円、総返済額約4,174万円
- 金利2.5%:毎月約107,249円、総返済額約4,504万円
この試算では、金利が1.5%から2.0%に上がるだけで、毎月返済額は約7,500円増えます。さらに総返済額では約316万円の差になります。1.5%から2.5%まで上がると、毎月では約1万5,000円、総返済額では約646万円の差です。家計にとってはかなり大きな負担増といえるでしょう。
借入額4,000万円の場合
次に、4,000万円を35年返済で借りた場合です。
- 金利1.5%:毎月約122,474円、総返済額約5,144万円
- 金利2.0%:毎月約132,505円、総返済額約5,565万円
- 金利2.5%:毎月約142,998円、総返済額約6,006万円
4,000万円になると、金利1.5%から2.0%への上昇で、毎月返済額は約1万円増えます。総返済額では約421万円の差です。さらに2.5%まで上がると、1.5%との差は総返済額で約862万円に広がります。住宅価格が高いエリアでは4,000万円台の借入も珍しくないため、この差は現実的な問題です。
借入額5,000万円の場合
5,000万円を35年返済で借りた場合の試算は以下のとおりです。
- 金利1.5%:毎月約153,092円、総返済額約6,430万円
- 金利2.0%:毎月約165,631円、総返済額約6,957万円
- 金利2.5%:毎月約178,748円、総返済額約7,507万円
5,000万円クラスの借入では、金利差の影響がさらに大きくなります。1.5%から2.0%で毎月約1万2,500円、総返済額では約527万円増えます。1.5%から2.5%なら、総返済額の差は約1,078万円です。金利が1%違うだけで、車1台分に近い差が出ることもあると考えると、固定金利の水準は慎重に見極めたいところです。
なぜ固定金利の上昇が重く感じやすいのか
固定金利の上昇が家計に重く感じやすい理由は、増えた返済額が長期間続くからです。変動金利なら将来下がる可能性もありますが、全期間固定金利では借入時点の条件が完済まで続きます。つまり、「高い時期に借りる」と、その影響を何十年も受けることになります。その代わり、将来の金利上昇リスクを避けやすいという安心感はあります。
また、住宅ローンの負担は、毎月返済額だけで判断しないことも重要です。住宅購入後には、固定資産税、火災保険、修繕費、管理費、教育費など、さまざまな支出が重なります。毎月の返済額が何とか払える水準でも、家計全体では余裕がなくなることがあります。だからこそ、「借りられる額」ではなく「返し続けられる額」で考える必要があります。
固定金利が上がる局面で考えたい3つのポイント
1. 借入額を少し抑える
固定金利が高い局面では、無理に借入額を伸ばさないことが大切です。物件価格の上限から考えるのではなく、毎月返済額の上限から逆算する方が失敗しにくくなります。たとえば、月10万円前後に収めたいのか、12万円まで許容できるのかで、適正な借入額は大きく変わります。
2. 総返済額まで確認する
住宅ローンを比較するときは、金利の数字だけでなく、総返済額まで見ておくべきです。固定金利は月々の差が比較しやすい一方で、返済期間が長いぶん、累計差額が大きくなりがちです。月5,000円の差でも、35年積み重なると大きな金額になります。
3. 安心感にどこまでお金を払うか考える
固定金利の最大の価値は、将来の返済額が読める安心感です。毎月の支出を安定させたい人、教育費のピークが見えている人、金利上昇が怖い人には向いています。一方で、少しでも月々の返済を軽くしたい人には、固定金利が重く感じられることもあります。安心を優先するのか、当初負担の軽さを優先するのか、自分の家計に照らして判断することが重要です。
固定金利が向いている人
固定金利が向いているのは、毎月の支出を一定に保ちたい人です。たとえば、共働きでも今後の働き方が変わる可能性がある家庭、子どもの教育費がこれから本格化する家庭、金利上昇のニュースを見るたびに不安になる人には相性が良いでしょう。返済計画が立てやすいので、家計管理を安定させたい人には大きなメリットがあります。国土交通省の調査でも、住宅ローン市場では変動金利型の割合が高い一方で、固定金利型や証券化ローンも一定の選択肢として存在しています。
固定金利が向いていない人
一方で、固定金利が向いていないのは、当初の返済額をできるだけ抑えたい人です。家計に余裕が少なく、少しの返済差でも厳しくなる場合、高い固定金利で借りることが重荷になることがあります。また、短期間での住み替えや繰上返済を前提としている人は、固定金利の安心感を十分に生かしきれない場合もあります。重要なのは、金利タイプの正解を探すことではなく、自分の家計に合う形を選ぶことです。
まとめ
住宅ローンの固定金利が上がると、返済額は確実に増えます。3,000万円の借入でも、金利差0.5%で総返済額は300万円超変わる可能性があり、4,000万円、5,000万円と借入額が増えるほど差は大きくなります。固定金利は返済額が読める安心感が魅力ですが、その安心感にはコストが伴います。
だからこそ、固定金利を選ぶ際は「今の金利でいくら借りられるか」ではなく、「今の金利で無理なく返し続けられるか」を基準に考えることが大切です。返済に少しでも不安がある場合は、早めに金融機関や公的な相談窓口に相談するのが安心です。金融庁も相談窓口の活用を案内しています。
参考資料・出典