住宅ローンを検討するとき、多くの人が悩むのが「変動金利と固定金利はどっちがいいのか」という問題です。
変動金利は、借入当初の金利が低めに設定されることが多く、毎月の返済額を抑えやすい点が魅力です。一方、固定金利は、借入時点で将来の返済額や総返済額を見通しやすく、家計管理がしやすいという安心感があります。
これまで日本では、長い間「低金利」が続いてきました。そのため、住宅ローンを組む人の多くが変動金利を選んできました。国土交通省の「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」でも、令和6年度の新規貸出額における金利タイプ別割合は、変動金利型が83.5%と最も高い割合を占めています。
しかし、2026年時点では、これまでと同じ感覚で「とりあえず変動金利でよい」と判断しにくい状況になっています。日本銀行は2025年12月の金融政策決定会合で、政策金利である無担保コールレート・オーバーナイト物の誘導目標を、従来の0.5%程度から0.75%程度へ変更したと説明しています。
つまり、住宅ローンを考えるうえでは、「今の金利が低いか高いか」だけでなく、「将来、金利が上がった場合に自分の家計が耐えられるか」を考えることが重要になっています。
変動金利とは?初心者向けにわかりやすく解説
変動金利とは、借入期間中に金利が見直されるタイプの住宅ローンです。一般的には、半年ごとに金利が見直される仕組みが多く、金融機関の基準金利や市場金利の動きによって、将来の適用金利が変わる可能性があります。
変動金利の最大のメリットは、固定金利に比べて借入当初の金利が低くなりやすいことです。金利が低ければ、毎月の返済額も抑えやすくなります。そのため、同じ借入額でも固定金利より家計に余裕が生まれやすいと感じる人も多いでしょう。
ただし、変動金利には金利上昇リスクがあります。今は返済額に余裕があっても、将来金利が上がれば、利息負担が増え、返済総額が大きくなる可能性があります。
特に注意したいのは、変動金利を選んだからといって、必ずしもずっと低い返済額が続くとは限らない点です。金利が上がった場合、毎月返済額が増える可能性があり、家計の支出計画が崩れることもあります。
住宅金融支援機構の2026年1月調査では、住宅ローン利用者のうち「変動型」を利用した人は75.0%で最も多い一方、今後1年間の住宅ローン金利について「現状よりも上昇する」と回答した人は73.7%にのぼっています。
この結果からも、多くの人が変動金利を選びつつも、金利上昇への不安を感じていることがわかります。
固定金利とは?返済額が見通しやすい安心型
固定金利とは、一定期間または借入期間全体にわたって金利が固定される住宅ローンです。代表的なものには、全期間固定金利型と固定期間選択型があります。
全期間固定金利型は、借入から完済まで金利が変わらないタイプです。借入時点で毎月の返済額や総返済額がほぼ確定するため、長期的な家計管理がしやすいのが特徴です。
固定期間選択型は、3年、5年、10年など、一定期間だけ金利を固定するタイプです。固定期間が終了した後は、その時点の金利状況に応じて、再び固定金利を選ぶか、変動金利へ移行するかを選択するケースが一般的です。
固定金利のメリットは、金利上昇の影響を受けにくいことです。借入後に市場金利が上昇しても、固定期間中は返済額が変わらないため、将来の支出を計画しやすくなります。
一方で、固定金利は変動金利よりも借入当初の金利が高くなりやすい傾向があります。そのため、金利が上がらなかった場合には、結果的に変動金利より総返済額が多くなる可能性もあります。
つまり、固定金利は「返済額の安さ」よりも「返済計画の安定性」を重視する人に向いた選択肢といえます。
2026年に住宅ローン金利を考えるうえで大切な視点
2026年版として変動金利と固定金利を比較するなら、最も大切なのは「これからの金利動向は読めない」という前提に立つことです。
日本銀行は、2025年12月の総裁記者会見で、政策金利を0.75%程度へ引き上げたことを説明したうえで、今後の金融政策についても、経済・物価情勢に応じて運営していく方針を示しています。
これは、今後も必ず金利が上がるという意味ではありません。景気、物価、賃金、海外経済、為替、金融市場など、さまざまな要因によって金利環境は変わります。将来の金利を正確に予測することは、専門家であっても簡単ではありません。
だからこそ、住宅ローン選びでは「どちらが得か」だけでなく、「自分の家計に合っているか」を基準にすることが重要です。
変動金利を選ぶ場合は、金利が上がっても返済を続けられるか。固定金利を選ぶ場合は、当初の返済額が多少高くても、長期的な安心を優先できるか。このように、自分の家計の余力やリスク許容度を冷静に確認する必要があります。
変動金利が向いている人
変動金利が向いているのは、手元資金や金融資産にある程度の余裕がある人です。
たとえば、預貯金や投資信託、株式などの金融資産があり、万が一金利が上昇した場合でも、繰り上げ返済によって借入残高を圧縮できる人は、変動金利を選びやすいといえます。
変動金利のリスクは、金利が上がったときに返済負担が増えることです。しかし、手元資金に余裕があれば、金利上昇時に一部繰り上げ返済を行い、元本を減らすことで利息負担を抑えることができます。
また、収入が安定しており、毎月の返済額が多少増えても家計に大きな影響が出にくい人も、変動金利を検討しやすいでしょう。
具体的には、次のような人です。
- 住宅ローン以外にも十分な預貯金がある
- 急な支出に備えた生活防衛資金を確保している
- 金利が上がった場合に繰り上げ返済できる余力がある
- 毎月の返済額が増えても家計が耐えられる
- 借入額を無理のない範囲に抑えている
- 将来的な収入減少リスクが比較的小さい
変動金利は、金利が低い時期には返済額を抑えやすい魅力があります。しかし、そのメリットを活かすためには、金利上昇時に対応できる資金的な余裕が必要です。
逆に、毎月の返済額をギリギリで組んでいる場合、変動金利は慎重に考えるべきです。金利が上がったときに返済が苦しくなる可能性があるためです。
固定金利が向いている人
固定金利が向いているのは、手元資金や金融資産にそこまで余裕がなく、将来の返済額を明確にしておきたい人です。
住宅ローンは、20年、30年、35年と長期間にわたって返済していくものです。その間には、子どもの教育費、車の買い替え、親の介護、自分や家族の病気、転職、収入減少など、さまざまなライフイベントが起こる可能性があります。
こうした将来の変化を考えると、毎月の返済額があらかじめ決まっている固定金利には大きな安心感があります。
特に、次のような人は固定金利を検討する価値があります。
- 毎月の返済額を一定にしたい
- 将来の家計計画を立てやすくしたい
- 金利上昇による返済額増加を避けたい
- 繰り上げ返済に回せる資金があまり多くない
- 教育費など、今後大きな支出が見込まれる
- 精神的に金利上昇リスクを抱えたくない
固定金利は、変動金利に比べると当初の返済額が高くなる可能性があります。しかし、将来の返済額が見えやすいという点では、家計管理のしやすさがあります。
「多少金利が高くても、毎月の返済額が変わらないほうが安心できる」という人にとって、固定金利は有力な選択肢になります。
「変動金利のほうが得」とは限らない理由
住宅ローンを比較するとき、つい現在の金利だけを見てしまいがちです。たしかに、借入当初の金利だけを比べれば、変動金利のほうが低く見えるケースは多いです。
しかし、住宅ローンは長期の借入です。最初の数年だけでなく、20年後、30年後まで含めて考える必要があります。
仮に、今の変動金利が低くても、将来金利が上昇すれば、総返済額が固定金利を上回る可能性もあります。逆に、金利があまり上がらなければ、変動金利のほうが結果的に有利になる可能性もあります。
つまり、変動金利と固定金利のどちらが最終的に得になるかは、将来の金利動向によって変わります。そして、その将来の金利動向は誰にも正確には読めません。
だからこそ、住宅ローン選びでは「得しそうか」だけで判断するのではなく、「損をした場合でも生活を守れるか」という視点が欠かせません。
住宅金融支援機構の調査では、住宅ローンの金利リスクについて「理解しているか少し不安」「よく理解していない」「全く理解していない」と回答した人の合計が52.0%とされています。
金利タイプを選ぶ前に、自分がどのようなリスクを負うのかを理解しておくことが大切です。
住宅ローンを選ぶ前に確認したい5つのポイント
変動金利か固定金利かを選ぶ前に、次の5つを確認しておきましょう。
1つ目は、生活防衛資金があるかどうかです。住宅ローンを組んだ後も、病気、失業、修繕費、教育費などに備える資金は必要です。預貯金をすべて頭金に入れてしまうと、金利上昇以前に、急な支出に対応できなくなる可能性があります。
2つ目は、借入額が年収に対して大きすぎないかです。借りられる金額と、無理なく返せる金額は違います。金融機関が貸してくれる金額いっぱいまで借りるのではなく、将来の支出も考えて余裕を持った借入額にすることが大切です。
3つ目は、金利が上がった場合の返済額を試算しているかです。変動金利を選ぶなら、金利が1%、2%上がった場合に毎月返済額がどれくらい増えるのかを確認しておきましょう。
4つ目は、繰り上げ返済できる余力があるかです。変動金利を選ぶ場合、金利上昇時に元本を減らせるかどうかが重要になります。繰り上げ返済の資金がまったくない状態で変動金利を選ぶと、金利上昇時の対応が限られます。
5つ目は、精神的に金利変動に耐えられるかです。住宅ローンは金額が大きいため、金利が少し動くだけでも不安を感じる人は少なくありません。毎月の返済額が変わる可能性をストレスに感じるなら、固定金利のほうが向いている場合もあります。
2026年版の考え方:変動金利と固定金利はどっちがいい?
2026年に住宅ローンを選ぶなら、結論は「家計に余裕があるなら変動金利も選択肢、余裕が少ないなら固定金利を重視」です。
変動金利は、手元資金や金融資産に余裕があり、万が一金利が高騰した場合でも、繰り上げ返済で借入残高を圧縮できる人に向いています。また、返済額が増えても生活水準を大きく下げずに支払いを継続できる人であれば、変動金利の低さを活かせる可能性があります。
一方で、手元資金や金融資産にそこまで余裕がない人、教育費や生活費の負担が大きい人、将来の返済額が増えることに不安を感じる人は、固定金利を選ぶほうが安心です。
固定金利は、借入時点で支払総額が見通しやすく、長期的な家計計画を立てやすいという強みがあります。金利が将来どう動くかわからないからこそ、返済額を明確にしておく価値は大きいといえます。
まとめ:金利を読むより、自分の家計を読むことが大切
変動金利と固定金利のどちらがいいかは、単純に決められるものではありません。金利が今後どう動くかによって、有利・不利は変わります。
2026年時点では、金利上昇を意識する人が増えており、住宅ローン利用者の間でも「今後1年間の住宅ローン金利は上昇する」と考える人が多くなっています。
しかし、これからの金利動向を正確に読むことはできません。だからこそ、住宅ローン選びで本当に大切なのは、金利を予想することではなく、自分の家計がどこまでリスクを取れるのかを見極めることです。
手元資金や金融資産に余裕があり、万が一金利が高騰した場合でも、繰り上げ返済による借入残高の圧縮や、返済額増加後の支払い継続ができる人は、変動金利を選ぶ余地があります。
一方で、手元資金や金融資産にそこまで余裕がない人は、支払総額や毎月の返済額が明確になりやすい固定金利を選ぶほうが安心です。
住宅ローンは、人生の中でも大きな契約です。「少しでも安く借りたい」という視点も大切ですが、それ以上に「無理なく返し続けられるか」が重要です。変動金利と固定金利の違いを理解し、自分の家計に合った選択をすることが、後悔しない住宅ローン選びにつながります。
参考・出典
国土交通省 「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」
住宅金融支援機構 「住宅ローン利用者の実態調査結果(2026年1月調査)」
日本銀行 「2025年12月金融政策決定会合での決定内容」