2026年9月の日本株市場は、指数だけを見ると比較的落ち着いた1カ月でした。日経平均株価は8月末の66,311.93円から9月30日の66,753.72円へ上昇しましたが、上昇率は約0.7%にとどまり、8月の月間上昇率3.02%と比べると勢いは鈍化しました。
ところが個別株に目を向けると景色はまったく違います。9月はTOBやMBO、株式交換、資本業務提携、配当・株主優待の拡充などを材料に、1カ月で50%を超える上昇となった銘柄が相次ぎました。8月がAIや成長期待、好業績を背景とした上昇が目立ったのに対し、9月は「企業価値を直接動かす資本政策」が株価を大きく動かした印象です。
今回は東京証券取引所のプライム・スタンダード・グロース市場に上場する国内普通株を対象として、2026年9月1日の始値と9月30日の終値を比較し、上昇率の高かった銘柄を10位から1位まで紹介します。
なお、2026年9月分のJPX「月間相場表」は10月1日時点ではまだ公表前です。JPXでは前月分を原則として毎月第7営業日に掲載しているため、本稿では東京証券取引所の日報等を基に独自集計しています。後日公表される確定データや過誤訂正等によって数値が変わる可能性があります。
2026年9月 株価上昇率ランキングTOP10
第10位 プロジェクトホールディングス(9246)|上昇率 約57.1%
9月1日始値:1,109円
9月30日終値:1,742円
上昇率:約57.1%
第10位はプロジェクトホールディングスです。9月1日の始値1,109円から9月30日の終値1,742円まで上昇し、1カ月で約57.1%の上昇となりました。
大きな転機となったのは9月28日です。テクノプロ・ホールディングスは、完全子会社TX1を通じてプロジェクトホールディングス株式に対する公開買付けを実施し、完全子会社化を目指す取引を発表しました。プロジェクトホールディングス側も公開買付けに賛同する意向を示しており、東京証券取引所は同社株式を監理銘柄に指定しています。
発表が月末だったにもかかわらずTOP10入りしたことからも、株価へのインパクトの大きさが分かります。今回の上昇は通常の業績評価というより、買収・完全子会社化という企業イベントによって株価水準そのものが切り上がったケースと考えた方が分かりやすいでしょう。
第9位 豊和工業(6203)|上昇率 約57.9%
9月1日始値:1,548円
9月30日終値:2,444円
上昇率:約57.9%
第9位は豊和工業です。9月1日の始値1,548円から9月30日の終値2,444円まで上昇し、上昇率は約57.9%となりました。
豊和工業は工作機械や油圧機器などに加えて、防衛省向けの小火器を手掛けています。同社自身も有価証券報告書等で、防衛関連事業について防衛省の調達予算に大きく依存していることを事業上のリスクとして説明しています。2027年度の防衛省概算要求が公表されたこともあり、9月は防衛関連株への資金流入が意識されやすい環境でした。
一方、今回の株価上昇について会社側が特定の材料を理由として説明しているわけではありません。株価上昇とともに信用取引も活発化し、東京証券取引所は9月に信用取引に関する規制措置を実施しています。業績だけではなく、防衛関連というテーマ性と短期的な需給の強さが重なった銘柄と見るのが妥当でしょう。
第8位 レオパレス21(8848)|上昇率 約58.0%
9月1日始値:647円
9月30日終値:1,022円
上昇率:約58.0%
第8位はレオパレス21です。9月1日の始値647円から9月30日の終値1,022円まで上昇し、約58.0%の上昇となりました。
9月の最大の材料は、K891による公開買付けです。レオパレス21は公開買付けに賛同する意向を示し、取引が成立した場合には上場廃止となる可能性があることから、東京証券取引所は9月14日に同社株式を監理銘柄へ指定しました。
同時期には配当予想をゼロとする修正や事業譲渡に伴う業績予想の修正も公表されましたが、株式市場ではそれ以上に公開買付け条件が株価形成の中心になったと考えられます。通常であれば減配は株価にマイナスとなりやすい材料ですが、TOBが絡む局面では、現在の利益や配当よりも買付価格と取引成立の可能性が強く意識される典型例といえます。
第7位 Orchestra Holdings(6533)|上昇率 約58.1%
9月1日始値:1,190円
9月30日終値:1,881円
上昇率:約58.1%
第7位はOrchestra Holdingsです。9月1日の始値1,190円から9月30日の終値1,881円まで上昇し、上昇率は約58.1%となりました。
9月に投資家の関心を集めたのが株主還元です。同社公式情報では2026年12月期の期末配当予想を1株50円としており、さらに2026年12月末には通常の株主優待に加えて、創業10周年を記念した特別優待を実施する方針を示しています。200株以上を保有する株主を対象として、保有期間に応じた通常優待に1万円分の10周年記念優待が加わります。
同社はデジタルトランスフォーメーション事業なども展開しており、9月にはSBOMやMCP関連の新サービスについても発表しています。ただ、月末にかけて株価を強く押し上げた材料としては、将来の成長期待に加え、配当と株主優待という分かりやすい株主還元策が評価された面が大きかったと考えられます。
第6位 かどや製油(2612)|上昇率 約59.5%
9月1日始値:1,792円
9月30日終値:2,858円
上昇率:約59.5%
第6位は、ごま油で知られるかどや製油です。9月1日の始値1,792円から9月30日の終値2,858円まで上昇し、約59.5%の大幅高となりました。
9月1日に同社は一部報道に関するリリースを公表し、その後9月14日にはITG-G Holdingsによる公開買付けに賛同し、株主に応募を推奨することを正式に発表しました。ITG-G Holdingsはインテグラルが設立した特別目的会社で、公開買付けを通じた非公開化が計画されています。
かどや製油の場合は、正式発表より前から企業再編への期待が株価に織り込まれ始め、その後の正式発表によって材料が確認された流れが特徴的でした。食品株という業種だけを見て今回の上昇を説明するのは難しく、TOBという特殊要因が株価を大きく押し上げた銘柄です。
第5位 HYUGA PRIMARY CARE(7133)|上昇率 約62.4%
9月1日始値:1,295円
9月30日終値:2,103円
上昇率:約62.4%
第5位はHYUGA PRIMARY CAREです。9月1日の始値1,295円から9月30日の終値2,103円まで上昇し、上昇率は約62.4%となりました。
同社は9月25日、JG44による公開買付けの開始、自社株式取得、MBOの実施などを発表しました。経営陣が関与する非公開化を前提とした大型の資本政策であり、東京証券取引所も同日、同社株式を監理銘柄に指定しています。
発表は月末直前でしたが、その後は取引が成立することを前提とした価格形成へ一気に移行しました。東京証券取引所が9月30日の制限値幅上限を拡大する措置を取ったことからも、短期間で買い需要が大きく膨らんだことが分かります。
第4位 ミンカブ・ジ・インフォノイド(4436)|上昇率 約64.0%
9月1日始値:422円
9月30日終値:692円
上昇率:約64.0%
第4位はミンカブ・ジ・インフォノイドです。9月1日の始値422円から9月30日の終値692円まで上昇し、約64.0%の上昇となりました。
大きな材料となったのが9月17日に発表されたNTTデータ、SBIホールディングスとの3社による業務提携です。金融分野での新サービス創出や金融機関向けDX支援の高度化を目指すもので、同時に資本関係や主要株主の異動を伴う動きとなりました。
ミンカブはもともと金融情報サービスとの親和性が高い会社です。そのため、NTTデータの金融機関向け基盤とSBIグループの金融サービス網との連携は、将来の事業拡大を連想させやすい材料でした。ただし、提携による収益効果が短期間で確定するわけではなく、9月後半には信用取引も活発化しています。株価には業績期待だけでなく、短期資金の流入も含まれていたと見る必要があります。
第3位 原田工業(6904)|上昇率 約72.8%
9月1日始値:552円
9月30日終値:954円
上昇率:約72.8%
第3位は原田工業です。9月1日の始値552円から9月30日の終値954円まで上昇し、約72.8%という大幅な上昇となりました。
原田工業は自動車用アンテナを主力とし、ラジオやGPSなど自動車の通信領域を支える製品を世界の自動車メーカーに供給しています。自動車の電装化やコネクテッド化との関係が深く、事業テーマとしては市場の関心を集めやすい分野です。
ただし、今回のTOP10の中では少し特殊です。9月中の企業公式IRを確認した範囲では、TOBや大型増配、大幅な業績上方修正のように約73%の上昇を一つで説明できる大型開示は確認できません。直近の定例決算は8月13日の第1四半期決算でした。このため、事業への再評価に加え、需給や短期資金の流入など複数の要因が重なった可能性があります。材料が明確なTOB銘柄などとは分けて考えたいところです。
第2位 エアトリ(6191)|上昇率 約75.3%
9月1日始値:811円
9月30日終値:1,422円
上昇率:約75.3%
第2位はエアトリです。9月1日の始値811円から9月30日の終値1,422円まで上昇し、わずか1カ月で約75.3%上昇しました。
最大の材料となったのが、9月10日に発表された大規模な株主還元方針です。エアトリは2026年9月期から2028年9月期までの3年間について、減損損失計上前の税引後営業利益を基準とした配当性向100%を掲げ、3年間の配当総額100億円超を目指す方針を発表しました。2026年9月期の配当予想も1株160円とされ、前期実績10円から大幅な増額となります。
さらに同社は、株主還元策の第1弾として約24億円規模の自己株式取得をすでに実施しています。成長投資だけでなく、利益を株主へ積極的に還元する会社へ資本政策を大きく転換したことが、株価の再評価につながったとみられます。9月相場を象徴する「株主還元で企業価値の見方が変わった銘柄」の一つでしょう。
第1位 テクノマセマティカル(3787)|上昇率 約83.8%
9月1日始値:370円
9月30日終値:680円
上昇率:約83.8%
2026年9月の株価上昇率ランキング第1位はテクノマセマティカルです。9月1日の始値370円から9月30日の終値680円まで上昇し、上昇率は約83.8%。1カ月で株価は1.8倍を超えました。
同社については、まず通常の上昇銘柄とは事情が異なる点に注意が必要です。東京証券取引所は2026年6月、上場維持基準に適合しなかったことから同社株式の上場廃止を決定しており、10月1日付で上場廃止となりました。したがって9月30日は実質的な最終売買日となります。
その状況下で9月11日、アバールデータとの株式交換契約締結を発表しました。テクノマセマティカルを完全子会社化する資本政策が示されたことで、上場廃止後の事業・株主の扱いについて具体的な道筋が見えたことが、株価を大きく動かした要因の一つと考えられます。東京証券取引所も同日の経営統合に関する発表を受けて売買停止措置を取っています。
したがって、今回の83.8%上昇を単純な業績成長による急騰と受け取るのは適切ではありません。上場廃止と完全子会社化が重なった特殊な企業イベントによる値動きであり、2026年9月のランキング対象には含まれるものの、10月1日以降は通常の上場株として売買できない点には注意が必要です。
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2026年9月 株価上昇率TOP10一覧
| 順位 | 銘柄 | コード | 9月1日始値 | 9月30日終値 | 上昇率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | テクノマセマティカル | 3787 | 370円 | 680円 | 約83.8% |
| 2位 | エアトリ | 6191 | 811円 | 1,422円 | 約75.3% |
| 3位 | 原田工業 | 6904 | 552円 | 954円 | 約72.8% |
| 4位 | ミンカブ・ジ・インフォノイド | 4436 | 422円 | 692円 | 約64.0% |
| 5位 | HYUGA PRIMARY CARE | 7133 | 1,295円 | 2,103円 | 約62.4% |
| 6位 | かどや製油 | 2612 | 1,792円 | 2,858円 | 約59.5% |
| 7位 | Orchestra Holdings | 6533 | 1,190円 | 1,881円 | 約58.1% |
| 8位 | レオパレス21 | 8848 | 647円 | 1,022円 | 約58.0% |
| 9位 | 豊和工業 | 6203 | 1,548円 | 2,444円 | 約57.9% |
| 10位 | プロジェクトホールディングス | 9246 | 1,109円 | 1,742円 | 約57.1% |
※スマートフォンでは表を左右にスライドしてご覧いただけます。上昇率は2026年9月1日の始値と9月30日の終値を基に算出しています。
今回の集計は、前月の記事と同じく「月初営業日の始値から月末営業日の終値まで」を比較しています。そのため、「8月31日終値から9月30日終値」を比較する一般的な月間騰落率ランキングとは順位が異なる場合があります。
それでも興味深いのは、TOP10入りするために約57%もの上昇が必要だったことです。日経平均が9月に約0.7%の上昇にとどまった一方、企業固有の材料を持つ銘柄には極端なほど資金が集中していました。
9月に軟調だった業種・業界は?
輸送用機器や精密機器など景気敏感株の一角は伸び悩み
上昇率ランキングだけを見ると非常に強い相場に見えますが、9月の日本株全体が全面高だったわけではありません。日々の業種別指数を見ると、輸送用機器や精密機器、証券・商品先物、不動産、小売、その他製品などには相対的に弱い動きもみられました。
特に9月は、日本銀行による金融政策正常化が進むなかで国内金利への警戒が続きました。金利上昇は銀行などにとって収益改善要因になる一方、借入金の多い不動産会社や高PER銘柄にとっては資金調達コストや株価評価の面で逆風になる可能性があります。
また、輸送用機器や精密機器は世界景気、為替、海外需要の影響を受けやすく、同じ業種の中でも銘柄による格差が広がっています。9月相場は「どの業種を買っても上がる」という相場ではなく、資本政策や個別材料の有無によって株価に大きな差がついた1カ月だったと私は見ています。
なお、JPXの2026年9月分月間相場表は10月1日時点では未公表のため、業種別の確定月間騰落率については後日公表される公式データを確認する必要があります。
2026年10月の日本株はどうなる?
私は「指数より個別株」の相場が続くとみる
10月相場で私が最も注目しているのは、日経平均が何円になるかよりも、企業ごとの業績と資本政策です。
9月のTOP10を見ると、テクノマセマティカル、HYUGA PRIMARY CARE、かどや製油、レオパレス21、プロジェクトホールディングスなど、TOB・MBO・完全子会社化といった企業再編に関係する銘柄が非常に多く入りました。
さらにエアトリでは大規模な株主還元、Orchestra Holdingsでは配当・株主優待、ミンカブでは資本業務提携が株価を動かしています。
つまり、9月は「業績が良い会社を買えば上がる」という単純な相場ではありませんでした。企業が保有する現金や事業をどう使うのか、株主にどう還元するのか、上場を続けるのか非公開化するのかまで含めた「資本政策」が株価を大きく左右しています。
私はこの流れが10月にも続く可能性があると考えています。
10月後半は日米の金融政策が集中
もう一つ注意しておきたいのが金利です。日本銀行の現在の金融政策では、無担保コール翌日物金利を1.25%程度で推移させる方針が示されており、次回の金融政策決定会合は10月29日・30日に予定されています。
一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日のFOMCで政策金利の誘導目標を3.75~4.00%へ引き上げました。次回FOMCは10月27日・28日の予定で、日本銀行の金融政策決定会合とほぼ連続して開催されます。
10月最終週は米国金利、日本金利、ドル円相場が同時に動く可能性があります。金利上昇なら銀行や保険などが改めて注目される一方、不動産や高PER成長株には逆風になりやすく、反対に金利上昇観測が後退すればグロース株が買い戻される展開も考えられます。
そのため、10月は日経平均だけを見て「強い」「弱い」と判断するのではなく、金利と為替、それぞれの企業の決算や資本政策をセットで見ることが重要になりそうです。
10月は中間決算シーズンも始まる
そして10月後半からは、3月期決算企業の2027年3月期中間決算発表が本格化します。ここからは上期実績だけでなく、通期業績予想の上方修正・下方修正、増配、自社株買いなどが株価を大きく左右します。
9月に株価が上昇した銘柄でも、企業価値そのものが大きく改善した銘柄と、TOBなど特殊要因によって価格が上昇した銘柄は分けて考える必要があります。また短期間で50%、70%と上昇した銘柄を、その上昇率だけを理由に追いかけるのは慎重に考えたいところです。
私が10月相場を見るうえで重視したいのは、「指数より個別、テーマより業績と資本政策」です。日経平均が高値圏で上下しても、その内側では上がる株と下がる株の差がさらに広がる可能性があります。
まとめ|9月は「資本政策」が株価を動かした
2026年9月の株価上昇率ランキングでは、テクノマセマティカルが約83.8%上昇し1位となりました。2位のエアトリは約75.3%、3位の原田工業も約72.8%と、TOP3はいずれも1カ月で70%を超える上昇となっています。
ただ、9月のランキングで特に印象的だったのは上昇率そのものではありません。TOB、MBO、完全子会社化、資本業務提携、大規模増配、株主優待拡充など、会社側の資本政策が株価を動かした銘柄が非常に多かったことです。
8月はAIや成長期待、好業績が目立ったのに対し、9月は「その会社の価値を誰が、どの価格で評価するのか」という企業再編の側面が強まりました。
10月は決算発表に加え、10月27~28日のFOMC、10月29~30日の日銀金融政策決定会合が控えています。金利や為替によって市場全体が揺れる場面はありそうですが、その中でも業績修正、増配、自社株買い、企業再編といった個別企業の動きを追うことが、相場を見るうえでより重要になると私は考えています。
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出典・引用
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本記事は、日本取引所グループ(JPX)および各企業の公式発表などの公開情報をもとに、筆者が独自に集計・分析したものです。株価や上昇率、順位は集計条件によって他の情報源と異なる場合があります。掲載している銘柄や相場見通しは、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではなく、将来の株価上昇や投資成果を保証するものでもありません。
投資を検討する際は、各企業の最新の決算資料や適時開示などを確認し、最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。