はじめに|物価の変化に合わせて家計を整える
2026年7月に入り、食品や日用品、外食、電気代、ガス代、ガソリン代など、身近な支出の変化を感じている方も多いのではないでしょうか。スーパーで以前と同じ商品を購入しても会計金額が高くなったり、外食の回数を調整しても思うようにお金が残らなかったりすることがあります。
給与や手当が増えていても、物価の上昇によって生活のゆとりを実感しにくい場合もあります。このようなときは、無理に支出を削るのではなく、現在の家計に合った収入と支出のバランスをあらためて確認することが大切です。
一方、SNSやインターネット広告では、「物価高への備えとして投資を始めよう」「預金だけではお金の価値を守りにくい」「NISAを活用して資産形成を始めよう」といった情報も多く見られます。
長期的なインフレへの備えとして、株式や投資信託を保有することには一定の意味があります。NISAを活用し、長期・積立・分散を意識して資産形成を進めることも、有効な選択肢の一つです。
ただし、毎月の生活費に余裕がない状態で投資額を増やすと、家計全体のバランスを取りにくくなることがあります。物価高への備えとして最初に確認したいのは、投資商品の利回りだけではなく、毎月の収入と支出の流れです。
本記事では、2026年7月時点の消費者物価指数や電気・ガス料金支援を確認しながら、投資を無理なく続けるために整えておきたい家計管理の手順を、ファイナンシャルプランナーの視点から解説します。
2026年7月時点の物価動向
総務省統計局が2026年6月19日に公表した全国消費者物価指数によると、2026年5月の総合指数は2020年を100として113.5となり、前年同月比では1.5%上昇しました。
生鮮食品を除く総合指数は前年同月比1.4%上昇、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は1.8%上昇しています。2020年を100とした総合指数が113.5であることから、平均的な価格水準は2020年より13.5%高い状態です。
前年同月比1.5%という数字からは、物価上昇のペースが一時期より緩やかになっている様子も見られます。一方、家計に身近な食料は前年同月比3.5%上昇しており、総合指数を上回る伸びが続いています。
2026年5月の全国指数では、菓子類が8.1%、飲料が8.7%、生鮮魚介が7.5%、調理食品が4.4%上昇しました。チョコレートは25.8%、コーヒー豆は37.9%上昇しており、日常的に購入する食品の一部では価格の変化が大きくなっています。
さらに、全国の先行指標として公表される東京都区部の2026年6月速報値では、総合指数が前年同月比1.7%上昇、食料は3.7%上昇しました。外食は4.5%、肉類は6.3%、菓子類は4.9%、生鮮魚介は8.0%上昇しています。
物価全体の上昇率が緩やかになっても、食品や外食など購入頻度の高い項目の価格が上昇していれば、家計への影響は続きます。
消費者物価指数は平均的な価格変動を表す指標です。実際の負担感は、家族構成や生活スタイルによって異なります。食費の割合が高い家庭、子育て世帯、車を日常的に使う家庭、光熱費の割合が高い家庭では、物価の変化をより感じやすいこともあります。
2026年7月から電気・ガス料金の支援が実施
2026年夏は、7月から9月の電気・都市ガス使用分を対象として、国による料金支援が実施されます。家庭などが利用する低圧電力の値引き額は、次のとおりです。
| 使用月 | 低圧電力の支援額 | 都市ガスの支援額 |
|---|---|---|
| 2026年7月使用分 | 3.5円/kWh | 14円/㎥ |
| 2026年8月使用分 | 4.5円/kWh | 18円/㎥ |
| 2026年9月使用分 | 3.5円/kWh | 14円/㎥ |
都市ガスは、家庭および年間契約量1,000万㎥未満の企業などが対象です。
仮に1か月の電気使用量が350kWhの場合、電気料金の負担軽減額は7月使用分で約1,225円、8月使用分で約1,575円です。都市ガスを月30㎥使用する家庭では、7月使用分で約420円、8月使用分で約540円の負担軽減になります。
実際に値引きが反映される請求月は、契約先や検針日によって異なります。また、今回の支援は夏季の一定期間を対象としたものです。夏の支援を上手に活用しながら、支援期間の終了後も無理なく続けられる家計に整えておくことが大切です。
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物価が上昇している主な理由
現在の物価上昇には、複数の要因が関係しています。
原材料価格の上昇
食品には、小麦、油脂、砂糖、カカオ、乳製品、肉類など、さまざまな原材料が使用されています。原材料価格が上昇すると、メーカーが負担する製造コストも増加します。企業努力だけで吸収することが難しくなった場合には、商品の価格や内容量に反映されることがあります。
円安による輸入コストの増加
日本は、食料、エネルギー、飼料、資源などの多くを海外から輸入しています。
為替相場が円安方向に動くと、同じ量の商品や原材料を輸入する場合でも、円で支払う金額は増えやすくなります。その影響は輸入品だけでなく、輸入原材料を使用する国内商品にも広がります。
エネルギー・物流費の上昇
商品を製造する工場、商品を運ぶトラック、販売する店舗では、電気や燃料が使用されています。エネルギー価格が上昇すると、食品、日用品、外食、宅配、各種サービスなど、幅広い分野のコストに影響します。
人件費やサービス価格の上昇
人手不足や賃金上昇によって、企業が負担する人件費も増えています。
賃金の上昇は、働く人の収入を支えるうえで重要です。一方、企業側では増加した人件費を商品やサービスの価格に反映する動きも見られます。現在の物価は、原材料、為替、エネルギー、物流、人件費など、さまざまな要因によって決まっています。そのため、家計も価格の変化に合わせて柔軟に見直していくことが大切です。
物価高への備えは投資だけではない
投資は、長期的に資産を育てるための有効な手段です。ただし、毎月の生活費に余裕がない場合、投資だけで家計の状況がすぐに変わるとは限りません。
株式や投資信託には価格変動があり、購入した時期によっては一時的に評価額が下がることもあります。
たとえば、近い将来に生活費として使う可能性があるお金を投資し、その後に急な出費が発生したとします。その時点で相場が下落していれば、本来は長期保有する予定だった商品を早めに売却することになるかもしれません。
長期投資の効果を生かすためには、日常生活で使うお金と、長期間保有できる投資資金を分けておくことが大切です。
金融庁も、株式や投資信託には元本割れの可能性があると説明したうえで、資産形成では家計管理とライフプランニング、長期・積立・分散投資が重要だとしています。
物価高への備えとして投資を考える場合も、まずは投資を無理なく継続できる家計を整えることが第一歩です。
生活は「フロー」、投資は「ストック」で考える
家計を整えるうえで理解しておきたいのが、フローとストックの違いです。

フローとは毎月のお金の流れ
フローとは、一定期間に入ってくる収入と、出ていく支出の流れです。収入には、給与、年金、事業収入、副業収入などがあります。
支出には、家賃や住宅ローン、食費、水道光熱費、通信費、保険料、教育費、交通費、日用品費、医療費、税金や社会保険料などがあります。
収入が支出を上回れば、その差額を貯蓄や投資に回しやすくなります。反対に、支出が収入を上回る月が続く場合は、支出の内容や収入の状況を確認し、無理のない範囲で調整することが必要です。
ストックとは蓄えている資産
ストックとは、現時点で保有している資産です。預金、株式、投資信託、債券、保険の解約返戻金、不動産などが該当します。投資は、このストックを将来に向けて育てる方法です。しかし、日々の生活を支えているのは、毎月の収入と支出であるフローです。
まずフローを整え、そのうえで生まれた余裕資金をストックに移していくことで、家計と資産形成を両立しやすくなります。
配当金で生活費を補うには一定の元本が必要
「預金の一部を高配当株に移し、配当金を生活費に活用したい」と考える方もいるでしょう。資産から収入を得るという考え方は、長期的な資産形成において一つの選択肢です。ただし、配当金で毎月の生活費を大きく補うためには、一定の投資元本が必要です。
配当利回りを年3%と仮定した場合、税引前の配当金は次のようになります。
| 投資元本 | 年間配当金 | 1カ月当たり |
|---|---|---|
| 100万円 | 3万円 | 2,500円 |
| 300万円 | 9万円 | 7,500円 |
| 500万円 | 15万円 | 1万2,500円 |
| 1,000万円 | 30万円 | 2万5,000円 |
毎月5万円、年間60万円の収入を配当金から得る場合、配当利回り3%では約2,000万円、4%では約1,500万円の投資元本が目安になります。
課税口座では配当金に税金がかかるため、実際の受取額は税引前より少なくなります。また、NISA口座を利用する場合でも、配当利回りや元本が保証されているわけではありません。
企業の業績によって配当額が変わる可能性があり、株価も日々変動します。配当投資を活用するときは、毎月の収支を整えたうえで、長期的な資産形成の一部として取り入れることが大切です。
預金金利や住宅ローン金利、国債利回りなど、身近なお金を取り巻く環境が大きく変わっています。特に注目したいのが、元本保証型資産の代表格ともいえる「個人向け国債」です。 2026年7月募集分の個人向け国債は、変動10年が年1.80%、固[…]
物価高に備える7つの家計改善
1.毎月の手取り収入を確認する
最初に確認したいのは、額面年収ではなく、実際に口座へ振り込まれる手取り収入です。給与明細を見ながら、基本給、残業代、各種手当、税金、社会保険料を確認しましょう。
児童手当、副業収入、年金、家族からの生活費などがある場合は、それぞれ分けて記録すると家計の全体像を把握しやすくなります。
ボーナスは毎月の生活費とは分けて考え、まずは月々の給与で通常の生活費を賄えているかを確認することが大切です。
2.1か月の支出をすべて書き出す
次に、1か月分の支出を確認します。クレジットカードだけでなく、口座振替、現金、電子マネー、QRコード決済、家族名義のカードも含めて集計しましょう。
支出は、固定費と変動費に分けると見直しやすくなります。固定費には、家賃、住宅ローン、通信費、保険料、サブスク、ローン返済などがあります。
変動費には、食費、日用品、外食費、交通費、ガソリン代、医療費、交際費などがあります。
さらに、自動車税、固定資産税、車検、家電の買い替え、帰省費用など、毎月発生しない支出も確認しておきましょう。
たとえば、年間30万円の支出が見込まれる場合、月平均では2万5,000円です。毎月の支出だけでなく、年間を通じた支出も含めて考えることで、家計をより正確に把握できます。
3.変動費より先に固定費を確認する
家計を見直すときは、毎日の食費を細かく調整する前に、固定費を確認すると効率的です。
見直し候補には、利用頻度の低いサブスク、必要以上に大容量のスマートフォンプラン、保障内容が重複している保険、利用回数の少ないジムや有料会員、生活スタイルに合わない電気料金プラン、使用頻度の低い有料オプションなどがあります。
固定費は、一度見直すことで翌月以降も継続的な効果を期待できます。
J-FLECも、家計改善では必要な支出と欲しい支出を区別し、まず固定費、その次に変動費を見直す方法を示しています。
ただし、保険は保険料だけで判断するのではなく、保障内容、貯蓄状況、扶養家族の有無などを確認することが大切です。必要な保障を残しながら、現在の生活に合った内容へ整えましょう。
4.食費・医療費・冷暖房費は無理なく調整する
家計の見直しは、生活の質や健康を維持しながら行うことが大切です。食費を大きく減らすと栄養のバランスが崩れる可能性があり、夏にエアコンの使用を控えすぎると体調に影響することもあります。
必要な医療費、子どもの教育費、通勤費、生活を維持するための光熱費などは、暮らしの土台となる支出です。
食費を見直す場合は、食事量を減らすのではなく、買い物前に冷蔵庫の在庫を確認する、食品ロスを減らす、コンビニの利用回数を調整する、外食と中食の回数を把握するといった方法があります。
買う店舗をある程度決める、購入日をまとめる、ポイントを使うためだけの買い物を控えるといった工夫も効果的です。
健康や生活の質を大切にしながら、長く続けられる方法を選びましょう。
5.利用できる支援制度や料金プランを確認する
2026年7月から9月は、電気・都市ガス料金の支援が実施されます。
家計支援には、国の制度だけでなく、自治体独自の制度もあります。子育て世帯、高齢者世帯、ひとり親世帯などを対象とした給付、助成、減免制度が設けられている場合があります。
自治体の公式サイトや広報紙を確認し、利用できる制度がないか調べてみましょう。
電気代については、節電だけでなく、契約アンペア、料金プラン、燃料費調整額、解約金、ポイント還元なども確認することが大切です。
電力会社や料金プランを変更する場合は、料金単価だけでなく、契約条件や価格変動の仕組みも確認しましょう。市場連動型プランなどは、市場価格によって電気料金が変動するため、自分の生活スタイルに合っているかを判断する必要があります。
6.支出の見直しと収入改善を組み合わせる
家計を整える方法は、支出を減らすことだけではありません。収入を少し増やすことでも、家計にゆとりを作りやすくなります。
たとえば、勤務時間や働き方を見直す、資格手当や社内制度を確認する、不用品を整理して売却する、本業に支障のない範囲で副業を検討する、より条件の合う仕事を探すといった方法があります。
家族内で収入、家事、育児の分担について話し合うことも、働き方を見直すきっかけになります。
副業を選ぶ場合は、仕事内容や報酬の仕組みをよく確認しましょう。高額な初期費用や教材費を求められる場合は、契約内容を慎重に確認することが大切です。
月5,000円の固定費削減と、月5,000円の収入増加を組み合わせれば、年間では12万円の改善になります。支出と収入の両面から考えることで、無理の少ない家計改善につながります。
7.生活防衛資金を確保してから投資する
家計に余裕が生まれたら、その金額をすべて投資に回すのではなく、まず生活防衛資金を確保しましょう。
生活防衛資金とは、病気、収入減少、家電の故障、車の修理、家族の事情など、予定外の出来事に備える現金です。
必要額は、働き方や家族構成によって異なります。会社員と自営業者では収入の安定性が異なり、単身者と子育て世帯でも必要な金額は変わります。
十分な預金がない場合は、まず生活費1か月分を目標にし、その後は3か月分などへ段階的に増やしていく方法もあります。
生活防衛資金は、値上がりを目指すお金ではありません。必要なときにすぐ使える普通預金などで管理することが基本です。
NISAの積立額は家計に合わせて調整できる
NISAは資産形成に活用できる非課税制度ですが、限度額まで投資する必要はありません。毎月の積立によって生活費の余裕が少なくなっている場合は、積立額の減額や一時停止を検討することもできます。
毎月5万円の積立が負担に感じる場合は、3万円、1万円、5,000円など、無理なく続けられる金額へ調整する方法があります。積立額を見直すことは、資産形成をやめることではありません。長く継続するために、家計の状況に合わせてペースを調整することです。
生活防衛資金を十分に確保しながら、余裕資金の範囲で積み立てることで、相場の変動にも落ち着いて対応しやすくなります。投資は金額の大きさを競うものではありません。家計に余裕がある月は積立額を増やし、支出が多い時期は減らすなど、生活に合わせて柔軟に調整することが大切です。
投資を始める前に確認したい家計の目安
次の項目をおおむね満たしていれば、余裕資金による投資を検討しやすくなります。
- 毎月の収入が支出を上回っている
- リボ払いや高金利の借入を計画的に管理できている
- 税金や社会保険料の支払い資金を確保している
- 近い将来に使う教育費や車購入資金を分けている
- 急な支出に対応できる預金がある
- 投資額が値下がりしても生活に影響しない
- 短期的な利益ではなく長期保有を前提にできる
これらを確認したうえで、当面使う予定のないお金を投資に回すのが基本です。
毎月5,000円でも、生活に無理なく継続できるなら十分な資産形成です。一方、毎月5万円を積み立てていても、日常の支払いに余裕がなくなる場合は、現在の家計に合った金額へ調整すると安心です。
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まとめ|物価高の今こそ家計と投資のバランスを整えよう
物価上昇が続くと、「現金だけで大丈夫だろうか」「何か資産形成を始めた方がよいのでは」と考えることがあります。
そのようなときは、投資商品の比較と同時に、毎月の手取り収入と支出を確認することが大切です。家計の状況を把握することで、無理なく貯蓄や投資に回せる金額が見えてきます。
支出を確認するときは、固定費を中心に見直し、利用できる支援制度や料金プランも活用しましょう。支出の調整だけでなく、働き方や副業などによる収入改善を組み合わせることも効果的です。
家計に余裕が生まれた後は、生活防衛資金を確保し、近い将来に使うお金と投資資金を分けます。そのうえで、余裕資金を使って長期・積立・分散投資を始めることが、無理のない資産形成につながります。
投資は、現在の生活を大切にしながら、将来の安心を少しずつ作るための手段です。
物価の変化が続く時代だからこそ、周囲の情報に焦るだけでなく、自分の家計に合った金額とペースで取り組むことが大切です。
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参考・出典
総務省統計局 「消費者物価指数(CPI)」
総務省統計局 「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)5月分」
総務省統計局 「2020年基準 消費者物価指数 東京都区部 2026年(令和8年)6月分(中旬速報値)」
経済産業省 資源エネルギー庁 「エネルギー価格の支援について」
内閣府 「日本経済レポート(2025年度)―物価高を乗り越え、『強い経済』の実現へ―」
金融庁 「資産形成の基本:NISA特設ウェブサイト」
金融経済教育推進機構(J-FLEC) 「生活設計・家計管理」
本記事は、物価上昇と家計管理、投資に関する一般的な情報をまとめたものであり、特定の金融商品や投資を推奨するものではありません。投資には価格変動や元本割れのリスクがあり、配当金や分配金も保証されるものではありません。投資を行う場合は、生活防衛資金を確保したうえで、無理のない範囲で判断してください。最終的な投資判断は、ご自身の責任で行ってください。