日本の長期金利が、ついに3%を明確に上回る水準まで上昇しています。
財務省が2026年9月29日に公表した9月28日分の国債金利情報では、10年国債金利は3%台まで上昇しました。低金利が長く続いてきた日本の債券市場は、大きな転換点を迎えています。
金利上昇によって影響を受けるのが、国債や地方債、社債などを大量に保有する金融機関です。債券価格と市場金利は基本的に逆方向に動くため、低金利時代に購入した長期債ほど、市場金利が上昇すると時価が下落し、含み損が発生しやすくなります。
そこで今回は、JA・農林中央金庫などJA系統の金融機関以外の全国の地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合など地域金融機関を中心に、各金融機関が公表している決算資料やディスクロージャー資料から、債券の含み損が大きい金融機関を調べました。
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債券含み損が大きい金融機関TOP10
今回のランキングは、2026年6月末の第1四半期資料を確認できる金融機関については6月末、それ以外は2026年3月末の開示数値を使用しています。
また、金融機関によって「国内債券」「円債」「その他有価証券の債券」「満期保有目的債券」など開示方法が異なります。可能な限り国内金利上昇の影響が分かる債券評価損益を使用していますが、会計上まったく同じ条件で比較したランキングではありません。そのため、金額は各社の最新開示から把握できる概算値としてご覧ください。
そして最も重要なのが、このランキングは金融機関の破綻確率や経営危険度を示すものではないという点です。
あくまで「公表されている債券の含み損が金額ベースで大きい金融機関」を並べたものです。含み損が大きくても十分な自己資本を持つ金融機関や、金利スワップなどで金利リスクをヘッジしている金融機関もあります。
10位 京都中央信用金庫:約1,043億円
10位は京都中央信用金庫です。今回のTOP10では信用金庫として唯一ランクインしました。
2026年3月末の開示では、その他有価証券のうち債券について約2億9,100万円の評価益がある一方、評価損は約1,046億500万円となっています。差し引きした債券の評価損益は約1,043億円のマイナスです。
内訳を見ると、国債だけに偏っているわけではなく、地方債や社債でも評価損が発生しています。京都中央信用金庫は国内最大級の信用金庫で、有価証券の保有額自体が大きいため、評価損の絶対額も大きくなっています。
ただし、1,000億円を超える含み損があることだけを理由に経営状態を判断することはできません。信用金庫の場合は自己資本との比較や、有価証券の残存期間、満期まで保有できる資金余力なども確認する必要があります。
9位 山陰合同銀行:約1,201億円
9位は山陰合同銀行です。
2026年3月末時点の開示では、その他有価証券のうち債券の評価損益は約1,201億円のマイナスとなっています。特に国債の評価損が大きく、国内金利上昇の影響が表れています。
ここで注意したいのは、債券だけを切り取った数字と、有価証券ポートフォリオ全体の数字は違うということです。銀行によっては債券で含み損を抱えていても、政策保有株式などに大きな含み益があり、有価証券全体では一定の余力を残しているケースがあります。
山陰合同銀行についても、債券評価損の金額だけではなく、株式など他の有価証券、自己資本、収益力を含めて見ることが重要です。
8位 九州フィナンシャルグループ:約1,330億円
8位は、肥後銀行と鹿児島銀行を傘下に持つ九州フィナンシャルグループです。
2026年3月末時点の開示では、その他有価証券の債券について約1,330億円規模の評価損が確認できます。国内金利の上昇に伴い、低い利回りで購入した債券の市場価格が下落したことが背景にあります。
地域金融機関は、顧客から集めた預金のすべてを融資に回しているわけではありません。融資に回らない資金の一部を国債や地方債などで運用しているため、長く低金利が続いた時期に購入した債券ほど、現在のような急速な金利上昇局面では含み損が膨らみやすくなります。
九州フィナンシャルグループも2027年3月期第1四半期まで最新の決算情報を公表しています。
7位 広島銀行/ひろぎんHD:約1,349億円
7位は、ひろぎんホールディングス傘下の広島銀行です。
2026年6月末時点では、その他有価証券に分類される債券の評価損益が約1,349億円のマイナスとなっています。2026年3月末時点の約1,282億円から、さらに評価損が拡大しました。
内訳では国債の影響が大きく、地方債や社債にも含み損があります。一方で、ひろぎんグループは金利スワップなどを活用して金利変動リスクをヘッジしています。このため、債券現物だけの評価損を見る場合と、ヘッジ取引を合わせて見る場合では印象が大きく変わります。
これは今回のランキングを見るうえで非常に重要なポイントです。「債券で1,300億円の含み損がある」という事実と、「金融機関全体で1,300億円の経済的損失を抱えている」という意味は同じではありません。
6位 千葉銀行:約1,679億円
6位は千葉銀行です。
2026年3月末時点で、その他有価証券のうち債券の評価損益は約1,679億円のマイナスとなっています。2025年3月末は約835億円のマイナスだったため、わずか1年間で評価損は約844億円拡大しました。
数字だけを見るとかなり大きく感じますが、千葉銀行は株式に約2,657億円の評価益を持っており、その他有価証券全体では約1,250億円の評価益となっています。
つまり、債券の含み損だけを見て銀行全体の財務状態を判断すると実態を見誤る可能性があります。今後は債券評価損だけではなく、株式評価益やヘッジ取引、自己資本などをセットで確認していく必要があります。
5位 中国銀行/ちゅうぎんFG:約1,868億円
5位は、ちゅうぎんフィナンシャルグループ傘下の中国銀行です。
2026年6月末時点では、その他有価証券の債券評価損益が約1,804億円のマイナスとなっています。さらに満期保有目的債券の時価差額まで含めると、国内債券に関する含み損は概算で約1,868億円規模になります。
2026年3月末から比べると一部改善しているものの、依然として2,000億円に近い規模です。一方、中国銀行も株式などに評価益を持っており、債券だけの含み損がそのまま有価証券運用全体の損失になるわけではありません。
ちゅうぎんフィナンシャルグループは2026年10月29日に2027年3月期第2四半期決算を公表する予定としており、9月末時点で長期金利が3%台に上昇した影響がどの程度表れるのか注目されます。
4位 静岡銀行:約1,974億円
4位は、しずおかフィナンシャルグループ傘下の静岡銀行です。
2026年6月末時点では、円債の評価損が約1,931億円となっています。満期保有目的債券の時価差額などを含めて国内債券全体を見た場合、評価損は概算で約1,974億円規模となります。
静岡銀行は地方銀行の中でも資産規模が大きく、有価証券運用額も大きい金融機関です。そのため、金利上昇時には評価損の絶対額も大きく表れやすくなります。
一方で、金利ヘッジを反映した円債の評価損は約1,542億円まで縮小します。債券現物の評価損だけをランキング化すると見えにくい部分ですが、金融機関の実質的な金利リスクを見る場合には、この「ヘッジ後」の数字も重要です。
3位 八十二長野銀行:約2,137億円
いよいよTOP3です。
3位は八十二長野銀行で、2026年6月末時点のその他有価証券の債券評価損益は約2,137億円のマイナスとなっています。2026年3月末時点では約1,963億円だったため、3カ月で含み損がさらに拡大しました。
2,000億円という金額は大きいものの、八十二長野銀行も株式に大きな評価益を保有しています。そのため、ここでも債券の含み損だけを銀行全体の損失として捉えることはできません。
地域銀行の中には、長期間にわたる超低金利環境で長期国債などを積み上げてきた銀行があります。金利が急上昇すると長期債ほど価格下落幅が大きくなるため、今後は債券の平均残存期間にも注目したいところです。
2位 ふくおかフィナンシャルグループ:約2,172億円
2位は、福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行、福岡中央銀行などを傘下に持つ、ふくおかフィナンシャルグループです。
2026年6月末時点の円債評価損は約2,172億円となっています。2,000億円を超える大きな含み損ですが、ここでは数字をそのまま受け取らない方がよいでしょう。
ふくおかフィナンシャルグループは金利スワップなどによるヘッジを実施しており、ヘッジを反映すると円債の評価損は約777億円まで縮小します。さらに外国債券などを含めたポートフォリオでもヘッジ取引が行われています。
2,172億円という数字だけを見るのと、ヘッジ後の約777億円まで確認するのとでは評価が大きく変わります。この事例からも、「含み損が大きい=経営が危険」という単純な見方ができないことが分かります。
1位 めぶきフィナンシャルグループ:約2,325億円
今回のランキング1位は、常陽銀行と足利銀行を傘下に持つめぶきフィナンシャルグループです。
2026年6月末時点では、その他有価証券に分類される債券だけで評価損益は約2,116億円のマイナスとなっています。満期保有目的債券の時価差額などを含めた債券全体では、約2,325億円のマイナスとなりました。
しかし、ここでもヘッジ効果を見る必要があります。金利ヘッジを反映した債券の評価損は約616億円まで圧縮されており、表面上の2,300億円超という数字とはかなり差があります。
めぶきフィナンシャルグループは資産規模そのものが大きいため、債券運用額も大きく、含み損の絶対額が膨らみやすいという側面があります。今回1位になったことは、破綻リスクが最も高い、あるいは経営状態が最も悪いという意味ではまったくありません。
この点は今回のランキングで最も誤解してはいけないところです。
債券含み損が大きい金融機関TOP10一覧
ここまで紹介した金融機関をまとめると、次のようになります。
| 順位 | 金融機関 | 業態 | 債券含み損の目安 | 主な基準時点 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | めぶきフィナンシャルグループ | 地銀FG | 約2,325億円 | 2026年6月 |
| 2位 | ふくおかフィナンシャルグループ | 地銀FG | 約2,172億円 | 2026年6月 |
| 3位 | 八十二長野銀行 | 地方銀行 | 約2,137億円 | 2026年6月 |
| 4位 | 静岡銀行 | 地方銀行 | 約1,974億円 | 2026年6月 |
| 5位 | 中国銀行/ちゅうぎんFG | 地方銀行 | 約1,868億円 | 2026年6月 |
| 6位 | 千葉銀行 | 地方銀行 | 約1,679億円 | 2026年3月 |
| 7位 | 広島銀行/ひろぎんHD | 地方銀行 | 約1,349億円 | 2026年6月 |
| 8位 | 九州フィナンシャルグループ | 地銀FG | 約1,330億円 | 2026年3月 |
| 9位 | 山陰合同銀行 | 地方銀行 | 約1,201億円 | 2026年3月 |
| 10位 | 京都中央信用金庫 | 信用金庫 | 約1,043億円 | 2026年3月 |
開示上の分類は各金融機関で異なります。満期保有目的債券の時価差額を加えている金融機関と、その他有価証券の債券を中心に集計している金融機関があるため、この表は厳密な会計基準を完全に統一した比較ではありません。
なぜ長期金利が3%を超えると債券含み損が増えるのか
仕組み自体はそれほど複雑ではありません。
例えば、利回り0.5%の10年国債を保有しているところに、新しく利回り3%の国債が登場したとします。同じ価格なら、多くの投資家は当然3%の国債を選びます。そのため、以前発行された0.5%の債券は価格を下げなければ市場で売却しにくくなります。
これが、金利が上昇すると債券価格が下落する基本的な理由です。
さらに重要なのが残存期間です。一般的に満期までの期間が長い債券ほど金利変動に対する価格変動が大きくなります。超低金利時代に10年、20年といった長期債を大量に購入していた金融機関ほど、現在の金利上昇による影響を受けやすくなります。
日本では長期間にわたってゼロ金利やマイナス金利政策が続きました。その間、貸出だけでは十分な利回りを確保できず、国債や地方債などの有価証券運用を増やした地域金融機関も少なくありません。
ところが現在は10年国債金利が3%台に入っています。低金利時代に購入した債券と現在発行される債券との利回り差が大きくなればなるほど、既存債券の市場価格には下落圧力がかかります。
債券含み損が大きくても「破綻しそう」とは言えない
今回の記事で最も強調しておきたい点です。
このランキングは「破綻しそうな金融機関TOP10」ではありません。また、金融機関の破綻確率や信用力を順位付けしたものでもありません。
債券の含み損は、現在の市場価格で売却した場合に生じる損失を示すもので、実際にその損失が確定したわけではありません。満期まで保有できれば額面で償還される債券もあり、保有目的や会計区分によって財務への影響も異なります。
また、今回見たように、ふくおかフィナンシャルグループやめぶきフィナンシャルグループでは、金利スワップなどによるヘッジによって実質的な金利リスクを圧縮しています。
株式の含み益も重要です。千葉銀行のように債券では1,000億円を大きく超える含み損があっても、株式にはそれ以上の評価益を保有しているケースがあります。
したがって、債券含み損だけを取り出して「危険」「安全」と判断するのは適切ではありません。
本当に確認したいのは「含み損の額」より自己資本との比率
金融機関の金利リスクを見るなら、今後は絶対額だけではなく自己資本に対する比率を確認した方が実態をつかみやすくなります。
含み損÷自己資本を見る
例えば、債券含み損が2,000億円あっても自己資本が1兆円を超えている金融機関と、含み損が800億円でも自己資本が500億円程度しかない金融機関では、受ける影響はまったく違います。
大型地方銀行は保有する債券の金額そのものが大きいため、絶対額ランキングでは上位になりやすくなります。一方、規模の小さな信用金庫や信用組合は、含み損の金額が小さくても自己資本に対する割合が大きくなる可能性があります。
このため、次に見るべき指標は「債券含み損÷自己資本」です。
ヘッジ後の評価損益を見る
もう一つ見逃せないのが金利ヘッジです。
今回のランキングでは、ふくおかフィナンシャルグループの円債評価損は約2,172億円ですが、ヘッジ後では約777億円まで縮小します。めぶきフィナンシャルグループについても、債券の評価損は2,000億円を超える一方、ヘッジを考慮すると大幅に圧縮されます。
単純な含み損ランキングと、ヘッジ後の実質的な金利リスクランキングでは、順位が大きく変わる可能性があります。
含み損を実現損にしているかを見る
そしてもう一つが、債券を実際に売却しているかどうかです。
含み損の状態で保有を続けている限り、会計上の扱いは保有区分によって異なります。しかし、低利回り債を売却して新しい高利回り債へ入れ替える場合には、含み損が実際の売却損として確定することがあります。
短期的には利益を押し下げても、低利回りの債券を処分して高い利回りの債券へ入れ替えることで、その後の利息収入が増える可能性もあります。
したがって「債券売却損が出た=悪い」とも一概には言えません。金融機関がどのような目的でポートフォリオを組み替えているのかを見る必要があります。
長期金利3%超の本当の影響はこれから見えてくる
今回のランキングには、2026年3月末や6月末の数字が多く含まれています。
一方、日本の長期金利が3%を超えてきたのはその後です。財務省は2026年9月29日に9月28日分の国債金利情報を公表しており、9月末の債券価格には6月末時点よりさらに強い金利上昇圧力がかかっています。
ただし、6月末の債券残高をそのまま使って現在の含み損を計算することはできません。
金融機関はその間にも債券の償還や売却、新規購入、デュレーションの短期化、金利スワップによるヘッジなどを行っています。そのため「金利が何%上がったから含み損も何%増えた」と単純計算することはできません。
本当に注目したいのは、2026年9月末を基準とする2027年3月期中間決算です。
10月末から11月にかけて各金融機関の中間決算が公表されれば、長期金利3%時代に入ったことで債券含み損がどこまで増えたのか、あるいは債券の入れ替えやヘッジによってどこまで抑えられたのかが、より鮮明になってくるでしょう。
まとめ
長期金利が3%台まで上昇したことで、低金利時代に購入した国債や地方債を大量に保有する金融機関では、債券の含み損がこれまで以上に注目される状況になっています。
今回確認した範囲では、めぶきフィナンシャルグループ、ふくおかフィナンシャルグループ、八十二長野銀行などで2,000億円を超える規模の債券含み損が確認されました。信用金庫でも京都中央信用金庫のように1,000億円を超えるケースがあります。
ただし、何度も触れた通り、このTOP10は破綻確率が高い金融機関を順位付けしたものではありません。
「債券含み損の金額が大きい金融機関」を公開資料から比較したランキングであり、経営の安全性や信用力を示すランキングではありません。金融機関の健全性を判断するには、自己資本比率、利益水準、預金・貸出構造、流動性、株式の含み益、金利ヘッジ、債券の残存期間などを総合的に見る必要があります。
むしろ今後、私が注目したいのは「債券含み損÷自己資本」の比率です。
債券含み損の絶対額だけでは大型銀行ほど上位になりやすいため、自己資本に対してどの程度の含み損を抱えているのかを比較することで、金利上昇への耐久力の違いがより見えやすくなると考えます。
長期金利が3%台で推移するのであれば、2026年9月末の中間決算は地域金融機関を見るうえで一つの重要な節目になりそうです。
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出典・引用
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※本記事は各金融機関が公表する決算資料、ディスクロージャー資料などをもとに作成しています。金融機関によって有価証券の分類や開示方法が異なるため、ランキングの金額は完全に同一の会計基準で比較したものではありません。また、本記事は特定の金融機関の信用力、破綻可能性、預金の安全性を判定するものではなく、情報提供を目的としています。