「定期預金の金利が上がってきたから、しばらくは預金だけでいいのでは?」
最近、このように考える人も増えているのではないでしょうか。
長く続いた超低金利の時代から状況は大きく変わりました。日本銀行の政策金利は上昇し、銀行の定期預金や個人向け国債でも、以前とは比較にならないほど金利が付くようになっています。元本割れを避けながら利息を受け取れる環境が戻ってきたことは、預金者にとって歓迎すべき変化です。
ただし、ここで考えておきたいのが「金利が上がった=資産価値を守れる」とは限らないことです。
なぜなら、私たちがお金を持つ目的は、通帳に表示される数字を減らさないことだけではありません。そのお金で将来どれだけの商品やサービスを買えるか、つまり「購買力」を維持することも重要だからです。
2026年7月の全国消費者物価指数は、総合指数が前年同月比1.9%上昇、生鮮食品を除く総合指数も1.8%上昇しました。一方、2026年9月募集の個人向け国債は、変動10年が年1.95%、固定5年が年2.24%、固定3年が年1.96%となっています。金利だけを見ると物価上昇率にかなり近づいていますが、税引後では約1.55~1.78%となるため、物価上昇が続けば実質的な購買力を完全には守れない可能性があります。
そこで今回は、定期預金や個人向け国債を否定するのではなく、物価上昇が続く時代に「資産をどこに置くのか」という視点から考えていきます。
- 1 定期預金にも金利が付く時代が戻ってきた
- 2 元本が減らなくても「お金の価値」は減ることがある
- 3 2026年は国債金利も高い、それでも物価との競争になる
- 4 お金は「使う時期」によって置き場所を変える
- 5 年金生活者と40代・50代では取れるリスクが違う
- 6 40代・50代ならNISAを使った長期運用も選択肢になる
- 7 定期預金かNISAかではなく「両方持つ」という考え方
- 8 「投資は怖い」という人ほど一括投資をする必要はない
- 9 日本企業の成長に投資するなら「ひふみ投信」も選択肢
- 10 物価上昇時代は「安全資産だけ」のリスクも考える
- 11 定期預金は「不要」ではなく、役割が変わってきた
- 12 まとめ|金利が上がった今だからこそ資産の置き場所を見直したい
- 13 出典・引用
定期預金にも金利が付く時代が戻ってきた
ここ数年、日本の金利環境は大きく変化しています。
日本銀行は金融政策の正常化を進めており、2026年9月時点では無担保コール翌日物金利を1.0%程度で推移させる方針となっています。政策金利が上昇すれば金融機関の預金金利にも上昇圧力がかかるため、普通預金や定期預金の金利も以前より高い水準になってきました。
数年前まで、定期預金に100万円を預けても年間でもらえる利息はごくわずかでした。ところが現在では、ネット銀行や地方銀行、信用金庫・信用組合などを中心に、期間限定キャンペーンや新規資金限定の商品など、高い金利を提示する金融機関も増えています。
個人向け国債についても同様です。2026年9月募集分では固定5年の表面利率が年2.24%まで上昇しました。元本割れを極力避けながら運用したい人にとって、定期預金や個人向け国債の魅力は以前より明らかに高まっています。
だからといって、「これからは資産のすべてを定期預金にしておけば安心」と考えるのは少し早いかもしれません。
金利だけではなく、物価も上昇しているからです。
元本が減らなくても「お金の価値」は減ることがある
重要なのは名目金額ではなく購買力
定期預金の大きなメリットは、基本的に預けた金額が値動きしないことです。また、預金保険制度の対象となる一般預金等は、1金融機関につき預金者1人当たり元本1,000万円までと、その利息等が保護されています。
株式や投資信託のように「100万円だった資産が80万円になった」という値下がりを日々目にすることもありません。その安心感は非常に大きなものです。
しかし、100万円が10年後も100万円だからといって、その100万円の価値まで同じとは限りません。
例えば、現在100円で購入できる商品が、継続的な物価上昇によって数年後には110円、120円になっていけば、同じ100万円で購入できる商品の量は少なくなります。
つまり、通帳の数字は減っていなくても、実際にはお金の購買力が低下している可能性があります。
金利1%でも物価が2%上がれば実質的には目減りする
分かりやすく、税金を考慮せずに簡単な例で考えてみましょう。
100万円を年1%で運用すると、1年後には101万円になります。しかし同じ1年間に物価が2%上昇した場合、前年に100万円で購入できたものを購入するには102万円必要になります。
預金残高は増えています。それでも物価の上昇には追いついていません。
この差が「実質的な資産価値」を考えるうえで重要になります。
これまでの日本では長期間にわたり物価上昇率が低かったため、「元本を減らさないこと」が資産防衛として大きな意味を持っていました。しかし物価が継続的に上昇する時代になると、「元本を守ること」と「購買力を守ること」は別の問題になってきます。
2026年は国債金利も高い、それでも物価との競争になる
2026年9月募集の個人向け国債を見ると、金利上昇がかなり進んでいることが分かります。
| 商品 | 2026年9月の表面利率 | 税引後 |
|---|---|---|
| 変動10年 | 年1.95% | 約1.55% |
| 固定5年 | 年2.24% | 約1.78% |
| 固定3年 | 年1.96% | 約1.56% |
2026年7月の全国消費者物価指数は、総合で前年同月比1.9%上昇しています。
固定5年の表面利率2.24%だけを見ると物価上昇率を上回っていますが、税引後では約1.78%です。もちろん今後の物価上昇率が現在と同じ水準で推移するとは限りませんし、変動10年の金利も将来変化します。
それでも、「国債の金利が2%近くになったから、これでもうインフレ対策は十分」と単純に判断するのは難しいことが分かります。
ただし、これは個人向け国債や定期預金に意味がないという話ではありません。
むしろ、安全性を重視する資金については非常に有力な選択肢です。重要なのは「すべてのお金を一つの商品に置かない」という考え方です。
お金は「使う時期」によって置き場所を変える
資産運用を考えるとき、年齢だけで判断するのではなく、そのお金をいつ使うのかを考えると分かりやすくなります。
例えば、来年使う予定のお金を株式に投資するのは適切とは言いにくいでしょう。必要になったタイミングで株価が30%下落していれば、損失を確定して売却しなければならなくなるからです。
一方で、15年、20年先まで使わないお金まで普通預金だけに置いておけば、長期間の物価上昇によって購買力が低下する可能性があります。
そこで資産を大きく3つに分けて考えます。
近いうちに使うお金
日常生活費や急な出費に備える資金、数年以内に使う予定がある資金については、普通預金など換金性と安全性の高い場所に置くことが基本になります。
住宅修繕費、車の買い替え費用、子どもの進学費用など、支出時期が決まっているお金についても同様です。
「増やすこと」より「必要なときに確実に使えること」を優先します。
数年から10年程度守りたいお金
しばらく使う予定はないものの、大きな値下がりは避けたい資金については、定期預金や個人向け国債などが選択肢になります。
現在は金利が上昇しているため、以前より安全資産を保有するメリットが高まっています。
特に個人向け国債の変動10年は、半年ごとに適用金利が変わるため、今後さらに市場金利が上昇した場合には、その動きを一定程度反映できる特徴があります。
10年、20年先まで使わないお金
長期間使う予定のない余裕資金については、物価上昇への対応も考える必要があります。
株式や株式を組み入れた投資信託は価格変動がありますが、企業が物価上昇に応じて販売価格や売上、利益を伸ばすことができれば、長期的には企業価値の上昇につながる可能性があります。
この部分については、「元本保証」を最優先するのではなく、長期間かけて資産を成長させることを目的とする考え方が出てきます。
年金生活者と40代・50代では取れるリスクが違う
定年後は「増やす」より「大きく減らさない」が重要
すでに退職して年金を中心に生活している人の場合、現役世代とは資産運用の考え方が異なります。
例えば70歳で保有資産の大部分を株式に投資し、その直後に大きな株価下落が起きれば、資産価格の回復を何年も待てない可能性があります。毎月の生活費として資産を取り崩している場合には、安値でも売却せざるを得ないケースもあります。
そのため、定年後は定期預金や個人向け国債などの安全資産を中心にする考え方に合理性があります。
ただし、高齢者だから株式を一切保有してはいけないという意味ではありません。生活費や近い将来使う資金を十分に確保したうえで、余裕資金の一部を長期運用する方法もあります。
重要なのは、生活に必要なお金まで値動きのある資産に投資しないことです。
40代・50代にはまだ「時間」という強みがある
一方、40代や50代では状況が違います。
もちろん住宅ローン、教育費、親の介護、自分自身の老後資金など支出の多い年代ですが、60歳や65歳まで働くと考えれば、まだ10年、20年という運用期間を確保できる人も少なくありません。
この「時間」は資産運用において大きな意味を持ちます。
金融庁も、株式や投資信託などの運用商品について、預貯金より高いリターンを期待できる一方で元本割れの可能性があると説明しており、そのリスクとの付き合い方として「長期・積立・分散」を挙げています。
過去のデータを用いた金融庁のシミュレーションでも、国内外の株式・債券へ長期・積立・分散投資したケースでは、定期預金だけを積み立てたケースより大きなリターンとなった実績が示されています。
もちろん過去の実績が将来の運用成果を保証するものではありません。
それでも、まだ運用期間を十分に確保できる40代・50代であれば、「元本保証の商品だけ」という選択肢だけでなく、ある程度の値動きを受け入れて長期的な資産成長を狙うことも検討する価値があります。
40代・50代ならNISAを使った長期運用も選択肢になる
長期運用を考える際に利用したい制度がNISAです。
現在のNISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円まで利用できます。両方を合わせれば年間最大360万円、非課税保有限度額は最大1,800万円です。
通常、株式や投資信託から得た運用益には税金がかかりますが、NISA口座内で得た対象商品の運用益は非課税となります。
長期間投資するほど運用益が積み上がる可能性があるため、運用益が非課税になるメリットも長期になるほど大きくなる可能性があります。
ただし、NISA自体が利益を保証してくれるわけではありません。
NISAはあくまで税制上の制度です。NISA口座で購入した投資信託が値下がりすれば、当然ながら資産額も減少します。
だからこそ「NISAだから投資する」のではなく、「10年以上使わない余裕資金を長期・積立・分散で運用するためにNISAを利用する」という順番で考えることが重要です。
定期預金かNISAかではなく「両方持つ」という考え方
資産形成では、定期預金と投資信託を競争させる必要はありません。
それぞれ役割が違うからです。
定期預金や個人向け国債は、資産を大きく減らさないための「守るお金」として利用できます。一方、株式や投資信託は、価格変動を受け入れながら長期的に購買力を維持・向上させることを目指す「育てるお金」と考えることができます。
例えば、あくまで一例ですが、次のような考え方があります。
| 年代・状況 | 安全性を重視する資産 | 成長を目指す資産 |
|---|---|---|
| 年金生活中心 | 70~90%程度 | 10~30%程度 |
| 50代 | 50~70%程度 | 30~50%程度 |
| 40代 | 30~50%程度 | 50~70%程度 |
これは推奨比率ではありません。収入、保有資産、住宅ローン、家族構成、退職予定年齢、投資経験などによって適切な比率は大きく変わります。
大切なのは「100か0か」で考えないことです。
定期預金100%からいきなり株式100%へ移す必要はありません。例えば毎月3万円だけ投資信託を積み立て、残りは定期預金や個人向け国債で保有する方法もあります。
資産の一部を成長資産へ移すだけでも、「物価が上昇する一方で預金金利がそれに追いつかない」というリスクへの備えになります。
「投資は怖い」という人ほど一括投資をする必要はない
株式投資に踏み切れない理由として、「買った直後に暴落したらどうしよう」と考える人は多いと思います。
実際、株式市場は短期間では大きく変動します。
だからこそ、40代・50代から資産形成を始める場合でも、まとまった預金を一度にすべて投資する必要はありません。
例えば500万円の定期預金があるからといって、その500万円を一度に投資信託へ移す必要はありません。500万円はそのまま安全資産として残し、給与から毎月2万円、3万円、5万円と積み立てていく方法もあります。
金融庁が資産形成の基本として「長期・積立・分散」を挙げている理由もここにあります。
一度に投資時期を決めるのではなく、毎月一定額を積み立てることで購入時期を分ける。さらに国内外の複数の企業や資産へ分散することで、特定の企業や市場だけに依存するリスクを抑える。
この方法なら、「定期預金しか経験したことがない」という人でも、少額から投資資産を持ち始めることができます。
日本企業の成長に投資するなら「ひふみ投信」も選択肢
長期投資を始める場合、低コストのインデックスファンドを利用する方法もあれば、運用会社が企業を調査し、投資先を選別するアクティブファンドを利用する方法もあります。
その選択肢の一つが「ひふみ投信」です。
ひふみ投信は、レオス・キャピタルワークスが運用する投資信託で、主に日本の成長企業へ投資します。企業の規模だけで判断するのではなく、企業を調査しながら将来的な成長が期待できる企業を選別して投資していくことを特徴としています。
ひふみ投信はNISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の両方の対象となっています。買付手数料と解約手数料は無料で、信託報酬は年1.078%(税込)です。
もちろん、定期預金とは性格がまったく異なります。
ひふみ投信には元本保証がなく、株式市場が下落すれば基準価額も下落する可能性があります。そのため、数年以内に使う予定のお金を投資する商品ではなく、10年、20年という長期的な資産形成を考えている人が検討する選択肢の一つと考えた方がよいでしょう。
「預金だけでは物価上昇が少し心配。でも自分で個別株を選ぶのは難しい」
そのように感じている40代・50代であれば、NISAを利用しながら投資信託で少額から積み立てていく方法もあります。
預金だけに資産を置いておくのではなく、日本企業の成長を取り込みながら長期的な資産形成を考えたい人は、ひふみ投信の運用方針や過去の運用レポート、手数料、投資リスクなどを一度確認してみてはいかがでしょうか。
投資を始める場合には、過去の運用実績だけで判断せず、必ず最新の目論見書や運用方針、手数料、リスクを確認したうえで、自分の資産状況に合った金額から始めることが大切です。
物価上昇時代は「安全資産だけ」のリスクも考える
これまで資産運用のリスクというと、「株価が下がること」が中心に語られてきました。
しかし、物価が継続的に上昇する時代には、もう一つ考えなければならないリスクがあります。
それが「何もしないリスク」です。
定期預金は価格が大きく変動しないため、安心して保有できます。その一方で、預金金利より物価上昇率が高い状態が長期間続けば、資産の購買力は少しずつ低下していきます。
100万円が100万円のまま残っていることと、100万円の価値が守られていることは同じではありません。
一方、株式や投資信託には価格変動リスクがあります。
つまり、これからの資産形成では「預金にはリスクがなく、投資にはリスクがある」と単純に分けるのではなく、それぞれ異なるリスクがあると考えた方が分かりやすくなります。
預金にはインフレによる購買力低下のリスクがあり、株式には価格変動による元本割れのリスクがあります。
どちらか一方を完全に避けるのではなく、自分の年齢や資産状況に応じて両方を組み合わせることが、これからますます重要になりそうです。
定期預金は「不要」ではなく、役割が変わってきた
金利が上昇した現在、定期預金の魅力は確実に高まっています。
生活防衛資金や数年以内に使う予定のお金まで無理に投資へ回す必要はありません。元本を大きく減らしたくない資金については、定期預金や個人向け国債が今後も重要な置き場所になります。
一方で、10年、20年先まで使わない資金まで、すべて同じ場所に置く必要があるのかは考えてみる価値があります。
特に40代・50代の場合、まだ長期運用できる時間があります。
「定期預金か株式か」
ではなく、
「守るお金はいくら必要なのか」
「育てるお金はいくらまでなら持てるのか」
という考え方に変えてみると、自分に合った資産配分が見えやすくなります。
まとめ|金利が上がった今だからこそ資産の置き場所を見直したい
2026年は、以前とは比べものにならないほど預金や国債の金利が上昇しています。元本の安全性を重視する人にとって、これは非常に良い変化です。
しかし同時に、物価も上昇しています。
定期預金や国債の金利が上昇しても、税引後の利回りより物価上昇率の方が高ければ、実質的な購買力が低下する可能性があります。
だからといって、預金をすべて株式へ移す必要もありません。
生活費や近い将来使う資金は普通預金、数年間守りたい資金は定期預金や個人向け国債、10年・20年先を見据えた余裕資金はNISAを利用した投資信託などへ振り分ける。
このように「お金を使う時期」に合わせて置き場所を分けることが、物価上昇時代の資産管理では重要になります。
特に40代・50代は、定年までまだ時間があります。
元本保証だけを重視するのではなく、生活を守る安全資産を確保したうえで、余裕資金の一部を長期・積立・分散投資へ振り向けることも検討してよいでしょう。
預金金利が上がった今だからこそ、「どの銀行に預けるか」だけではなく、「自分のお金をどこに置いておくのか」まで一度考えてみてはいかがでしょうか。
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出典・引用
▶ 日本銀行「金融政策・金融市場調節」の公式ページはこちら
▶ 総務省統計局「消費者物価指数」の公式ページはこちら
▶ 財務省「現在募集中の個人向け国債」の公式ページはこちら
▶ 金融庁「NISAを知る」の公式ページはこちら
▶ 金融庁「資産形成の基本」の公式ページはこちら
▶ 金融庁「長期・積立・分散投資による資産形成」の公式資料はこちら
▶ 金融庁「預金保険制度」の公式ページはこちら
▶ ひふみ投信の公式ページはこちら
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